数年前、日本会議が話題になったとき、ひとびとは巨大な「右」の組織があることに驚いた。しかし本当に驚くべきだったのは、日本会議が地道な草の根の運動をしていたことだった。地方議会への働きかけ、署名集めといった運動は、かつてならば「左」の運動だった。日本会議はいわば敵の運動から学んだわけだ。 多くのひとは安倍内閣を「右」だと思っているが、そう単純にいいきれない。「右」が「左」の戦略や政策を学び、実践している現状があるからだ。 ブレイディみかこと北田暁大の往復書簡「左派は経世済民を語りうるか」(『中央公論』1月)が示すのは、アメリカや英国の反緊縮がサンダースやコービンといった「左」によって訴えられ支持を集めたのにたいして、日本の反緊縮がアベノミクスだということだ。「左」は経済成長を嫌い、反アベノミクスを唱えるが、いま求められるのは「アベノミクスを超えた包括的な経済思想」(北田)だという。 ならば、