日本の古美術の中では、「鳥獣戯画」は比較的よく知られた作品であろう。この作品は、漫画の源流であると言われることも多い。 たしかに「鳥獣戯画」でもっとも著名な甲巻は、ウサギやカエルが人間のような振る舞いをしていてファンタジックであるし、白地に墨の線だけで描くスタイルも漫画のようだ。ネコ耳の美少女に限らず、動物を擬人化することは漫画表現の有力な手法であるが、見た目に動物的な要素が色濃く残っているという意味では、2018年にマンガ大賞を受賞した『BEASTARS』 などが、とりわけよく似ているかもしれない。 しかし、両者はまったく同じというわけではない。例えば、「鳥獣戯画」にはコマ割や吹き出しなどは存在していない。動物が人間のように振る舞っていても、「鳥獣戯画」と『BEASTARS』は似ているようで似ていない、つかず離れずの厄介な関係なのである。それは『BEASTARS』におけるレゴシとハルの恋