『ブリュッセル効果 EUの覇権戦略 いかに世界を支配しているのか』 評者・藤好陽太郎 著者 アニュ・ブラッドフォード(コロンビア大学ロースクール教授) 白水社 6380円 世界の規制の覇者EU 米中らが従う謎を解き明かす 英国の欧州連合(EU)離脱やロシアのウクライナ侵攻をめぐる軍事的結束力の弱さを背景に、EU衰退論がくすぶる。本書は弱点を認めつつも、EUが規制の世界的な覇者であることを論理的かつ実証的に記す。 昨年の東京五輪では、日本の農作物が提供されない懸念が生じた。農産物の安全性などの国際認証「グローバルGAP(農業生産工程管理)」の取得が条件だったが、普及が遅れたためだ。難易度を下げた都道府県のGAPでどうにかクリアしたが、1990年代にEU基準に基づき始まったGAPの規制は、世界の農業に大きな影響を与えている。 著者は、グローバルな市場を規制するEUのパワーを「ブリュッセル効果」