社会に流布する様々なウソの中でも、最も根強いパターンは「これこれは、誰それのせいだ」という形をとるものだろう。何か悪いこと、気に入らないことを、自分とは関係ない誰かに押しつける言説である。一般に陰謀論と言われている。 陰謀論には、容易に差別に結びつくというやっかいな性質がある。このため、ウソを本当と信じ込んでしまった人によって悲劇的な事態が起きることも稀ではない。 ではなぜ、陰謀論は根強く、広がりやすく、差別に結びつきやすいのか。一例として、「911同時多発テロは、米政府の自作自演だった」という陰謀論を見ていこう。 911陰謀論の基礎は2つの事実だけ 2001年9月11日、燃料満載の4機の旅客機がほぼ同時にハイジャックされた。これらの機体のうち3機はハイジャック犯の手によって、ニューヨークの世界貿易センタービルの北棟、南棟、ワシントンD.C.の米国防総省本庁舎に突入。世界貿易センタービル南
Inc.:今月、ジャーナリズム界では、この2つの質問が話題になりました。バージニア大学社交クラブの集団暴行事件に関する記事の信ぴょう性が疑われ、最終的に撤回された件で、雑誌『Rolling Stone』が提訴されたのです。コロンビア大学ジャーナリズム大学院のレポートでは、この粗悪な記事が発表されてしまった原因は、ここ何年もの間、出版業界全体を悩ませている「短い納期」や「リソース不足」などではないと結論付けています。それよりも、もっとシンプルで人間的なことが原因である、と。 問題の記事を執筆したSabrina Rubin Erdely記者と『Rolling Stone』の編集者は、事件について語った若い女性への感情と、内容が真実であってほしいという主観が組み合わさった結果、善良なジャーナリズム精神を置き去りにしてしまったのです。 しかも、それをやったのは素人ではなく、スマートな人たちです。E
「経験」という疑いようのない事実 今から10年ほど前、わたしはWebプロダクションでグローバルのEIA*1案件を担当した後、インフォメーションアーキテクトとして独立しました。 独立後に関わったのは、以前から興味があったデザインフレームワークの構築でした。大手シンクタンクの研究開発として、当時まだ ISO 13407 だった人間中心設計の国際規格をベースに、約1年間かけてフレームワークを完成させました。 EIAとデザインフレームワークの目的はどちらも、理解され利用されるための品質向上と、それを維持するための仕組みづくりです。いずれも有意義に取り組んだプロジェクトでしたが、どうしても合理的な価値を目指すことへの懐疑心がありました。今思えば、職業的な実践と日常的な実践が、かけ離れていたのかもしれません。 それからわたしは、モダニズム的なパラダイムにあった情報アーキテクチャやユーザーエクスペリエン
景気の良し悪しにかかわらず毎年、出現するヒット商品。各社ヒット商品を出すために、知恵を絞っている。その開発秘話にヒット商品の眼を探ってみた。そこには何が隠されているのだろうか? 今回取り上げるのは、福岡の小さな会社アルゴプランの「茶柱縁起茶」だ。淹れれば必ず茶柱が立つこのお茶は、口コミでじわじわと売上を伸ばし、『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)をはじめ「日経トレンディ」(日経BP)、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)など、20社以上のメディアに取り上げられた。ネットでの販売を行わず、「2010年世界緑茶コンテスト」の金賞というブランド力の高い賞を受賞したことで有名百貨店バイヤーたちが日々殺到しているという。 今回は、そんなヒット商品の秘密を、同社の宮木初雄社長に伺った。 –このヒット商品は、どのようにして生まれたのでしょうか? 宮木初雄社
前回の記事の終わりに、かつては「ローコンテクスト」だったオンラインコミュニケーションが、より「ハイコンテクスト」なものへと推移してきたことについて触れました。 「ローコンテクスト/ハイコンテクスト」という切り口で、さまざまな文化におけるコミュニケーションの違いを明らかにしたのは、文化人類学者エドワード・ホール(Edward Hall)です。彼は1976年の著書『文化を超えて』の中で、コミュニケーションの意味を読み取るための「コンテクスト」の重要性を鮮やかに、かつ徹底的に論じてみせました。 英語の「context」という単語は、文脈、脈絡、背景、事情、前後関係、状況など、まさにコンテクスト次第でさまざまな日本語に翻訳できる、とても奥の深いことばです。 オンラインコミュニケーションのスペクトラム ホールが世界各地で調査・研究の対象とした、伝統的なオフラインでのコミュニケーションと同様に、現
ストーリーにおける読み手/書き手の関係論から自己形成まで。その効用を唱えたブルーナー『ストーリーの心理学』の解題。 Peter Orlovsky ‘Allen Ginsberg, June 1956’, ©Allen Ginsberg Estate 以前から、「経験」の伝え方として、「ストーリー」に勝るものはないと確信していた。しかし残念ながら、それはなんとなく「心に響く」気がするという、直感以上のものではなかった。 キリスト教の教義が物語として書かれたことにより、世俗化を果たして覇権を握ったこと。愛のような個の世界に生まれる抽象概念が論理的に説明できないこと。こうした事実に理由を求められなくもないが、もうすこし構造分析的に理解したいと考えていた。 その後、いろんな文献を漁ってきた末に、やっと納得いく解答に出会うことができた。今回はその書籍、心理学者のジェローム・ブルーナーによる『ストーリ
「経験のデザイン」について、最近考えていること。メディアを「アイデンティティ」としてとらえる試み。 Ittetsu Matsuoka ‘Untitled’, 2009 「経験のデザイン」における利用者の経験に限らず、動的な事象を静的なフレームで切り取って記述する方法は、複雑化を免れない。さらに深刻なのは、その方法が本来の意図から切断され、狭義を生んでしまうことだろう。 最近そうしたことを避けるために、提供者とそこで運営されるメディアを全部まとめて、その性質を「アイデンティティ」として認識するように心掛けている。 身体の拡張としてのメディア 例えば、「経験のデザイン」において利用者のペルソナが設定されるのは、属性やセグメントを確認するためではない。利用者の「アイデンティティ」に向き合って、最適なコミュニケーションを考えるためである。この方法は、チームの意識を合わせるといった目標がその先にある
作家の値打ちは読者の数で決まるものではありません。しかし、ひとりの作家の作品が45の言語に翻訳され、単に名前が通っているというだけでなく、本当に読まれ、愛され、多くの人を楽しませ、また多くの人を救い、励ましているという事実は、決して無意味ではないでしょう。 毎年、国際交流基金は、学術や芸術などの文化活動を通じ、日本と海外の相互理解に貢献した個人や団体に対して「国際交流基金賞」を授与しています。過去には宮崎駿さん、平山郁夫さん、小沢征爾さんも受賞しています。40回目となる本年2012年の受賞者には、作家の村上春樹さんなどが選ばれました。 本日2012年10月9日、六本木アカデミーヒルズにて授賞式が行われました。記事冒頭の言葉は、村上春樹さんゆかりの人物として登壇した東京大学大学院教授・柴田元幸さんによる村上春樹さん紹介スピーチの一節です。柴田元幸さんと村上春樹さんは『翻訳夜話』などの共著があ
「コミュニティの鍵は貢献にある」ミラツク代表・西村勇也さんが考える、未来をつくるための”コミュニティデザイン”とは? 2012.02.25 a Piece of Social Innovation a Piece of Social Innovation グリーンズ編集部 コミュニティ・デザインについて考える コミュニティ・デザインを考える時に何が必要だろう。 コミュニティは、人の集まりだ。そこで、最初にやることは、ネットワークやチームとの違いを明確にすること。コミュニティとネットワーク、チームは何が違うのか。この違いが見えないまま、コミュニティ・ビルディングを目的にしながら、実際にはネットワーク作りやチームビルディングになってします。そういう事例は様々なところで見られる。 震災復興に関わるアメリカの財団の助成担当の方と話していた時に、「”コミュニティビルディング”とアプリケーションに書か
樋口さんの記事がはてブ界隈で議論されていたので少し。 ■ 日本の自殺 [「デマかもしれないけど、いい話だからシェアする」がダメな理由] (higuchi.com blog) まず始めに、樋口さんが訴えられている「無批判に情報をシェアすることの誤り」については僕も強く賛同します。最近のデマネタをシェアやRTした人の動機は、「感動したから共有したい」というものだったかもしれません。しかしその目的が手段を正当化するものでないことは、昨年の東日本大震災後に起きたデマの蔓延という状況を思えば明らかでしょう。「100%の確証を得られてからシェアすべきというのは現実的ではない」という意見なら理解できますが、それでも真偽を気にせずにRTボタンを押して良いということにはならず、ましてや「デマだけどいい話だからいいよね!」という態度が許されるものではありません。 樋口さんはコメント欄で改めて、次のようにまとめ
[読了時間:3分] 情報化社会になれば人々を動かす力、社会を動かす力が変化する、という考え方がある。簡単に言ってしまえば、これまでは金銭がモノを言う社会だったが、これからは金銭よりも共感がモノを言う社会になり、多くの人がお金持ちを目指すのではなく、評価される人、信頼される人を目指すようになる、という予測だ。 わたしが最初にこの考え方に触れたのは、情報社会学の権威、公文俊平氏が2004年に出した「情報社会学序説」という本だった。 最近では、岡田斗司夫氏の著書「評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている」が同様の主張を行なっている。 特に岡田氏の本は、価値観が大きく変わるという部分に焦点を当てている。 確かに価値観は、これまでの貨幣経済社会と、これからの評価経済社会では大きく異なる。貨幣経済社会の中では、経済成長を目指すということが「正しい」という価値観があった。テクノロジーは生活を
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