本連載は、筆者井上とAI研究者である理化学研究所の高橋恒一氏とで立ち上げた「人工知能社会論研究会」での、研究会メンバーとの対話で得た知見を集約した内容をお届けする。連載中も、研究会での知見は更新しながら「体系化」を心掛けてお届けする予定だ。第2部として、私が2回にわたり「AIは仕事を奪うのか」「ベーシックインカム」などのテーマを考察する。 今回は、最近よく議論される「AIは仕事を奪うのか」という問題を経済学的に考察した筆者の見解をお示しする。 「技術的失業」とは何か? 「先生!僕、会計士になりたいんだけど、どう思いますか?」と学生に聞かれたことがある。私は返答に戸惑った。会計士は消滅する可能性の最も高い知的職業だと言われているからである。 近頃、「AIが労働者の仕事を奪うか?」といった問題が盛んに論じられている。その中には、これまでの資本主義の歴史において、新しい技術の導入による失業が大き