潜在能力に関する今年2月の提言発表で「カマス理論」を紹介したところ、これはたいへん面白い話だと反響が大きかった。読者の中にも、この話をきっとご存じの方がいるだろう。 水槽にお腹をすかせたカマスと、餌になる小魚を何匹か入れる。カマスは小魚を食べようとするが、カマスと小魚との間は透明なガラスの板で仕切られている。小魚にアタックしようとするカマスは、ガラス板に衝突して痛い思いをする。小魚への接近が何度も失敗に終わると、やがてカマスはあきらめて、餌を獲ろうという行為をやめてしまう。 そこで、透明の仕切り板を取り除いてやるが、カマスは相変わらず小魚にアタックしない。餌に近寄ることができる状況になっても、その行動を取らないのだ。目の前を小魚が通っているのに、カマスはもはや襲おうとはしない。 挑戦して失敗に終わる経験が繰り返されると、挑戦そのものをあきらめて無気力状態に陥ってしまう。いわゆる「学習性無力