2019年7月18日は私にとって特別な日になるはずだった。 ひとつは誕生日。綱渡りで生きてきて、気が付けばもう30代半ばだ。 ひとつは結婚記念日。今年で結婚2周年になる。仲は至って好調である。 そしてもうひとつは「コミック百合姫」で連載しているコラムが連載一周年を迎えることだ。去年の私の誕生日と結婚記念日に始まった連載は、好評のまま一年を乗り切った。 今から10年以上も前。20代になりたての私は腐っていた。 私が生まれ育ったのは娯楽のない小さな島。家庭の事情で進学が叶わずくすぶる思いを抱えて就職した。数少ない友人達は皆故郷を離れ、諸々の事情で自分を島に縛り付けなければならなかった私は、毎日孤独と嫉妬に心を沈めながら、満たされぬ鬱屈とした気持ちを抱えて生きていた。 そんな私にも趣味があった。本を読むことと、小説を書くことである。 毎日仕事から帰っては、大量のブラックコーヒーを飲んで、本を貪る