第2次安倍晋三政権の成立以来、政府による経済団体に対する賃上げ要請が恒例化している。要請の機能は大きく分けて2通りある。1つは日銀がインフレ実現を目指して金融緩和を続けているので、歩調を合わせて名目的な賃上げを求めるというもの。もう1つは雇用の非正規化や利潤の内部留保を通じて実質的な労働分配率が下がっているので、その向上を目指し実質賃上げを求めるものである。 ここでは、要請に意義があるとすれば第1の視点によるもので、第2の視点は根拠薄弱であることを論じたい。 ◆◆◆ まず、第2の視点を確認するため、過去20年弱の労働生産性と賃金の関係を振り返り、賃金決定のあり方に実質的な変化が起こっていないことを論証する。 限界生産力(生産要素を1単位投入した際の生産の増加量)で賃金が決まるという標準的な経済理論に従えば、マクロの生産技術が、労働投入の生産への貢献が一定の値であるという「コブ・ダグラス型の