1930年のベルリン。映画撮影のためベルリン滞在中のアントナン・アルトーは日本人青年総見寺龍彦と出会う。総見寺によれば、〈日本の王〉織田信長はローマ皇帝ヘリオガバルスと同じく両性具有者(アンドロギュヌス)であったという。折しもヘリオガバルスを主人公とする小説の構想を練っていたアルトーは興味を引かれ、総見寺と共に調査を進める。二人は信長が祀る牛頭天王は古代オリエントの太陽神・牛神バールが流れ着き名を変えた神であること、ヘリオガバルスも信長も「天から降って来た霊石」を統一原理として掲げていたこと、などを突き止め、アルトーはヘリオガバルス論の姉妹編となる信長論の執筆を進める。だが、総見寺の背後にはオカルティズムにとり憑かれたヒトラーの影があった。アルトーの研究成果によって魔術的確信を得たヒトラーは日本と同盟を結び、バール神=霊石信仰に基づく東西からの世界征服事業に邁進していくのだった…… 199