ブックマーク / note.kishidanami.com (32)

  • 自動車教習おかわり列伝-6日目「踏切で座布団を燃やせ」|岸田奈美|NamiKishida

    32歳が自動車免許をとるために、ヒィヒィがんばる短期集中連載。2〜3日に1話ずつ更新中。 1日目「適性検査の神童」 2日目「異世界転生系教習生」 3日目「盗んだPCで学び出す」 4日目「牙をもがれたオジン」 5日目「ヒヨ夫とヒヨ美」 なんの準備もなく、教科書すらもなく、60分後に学科試験を迎えることになってしまった。こんなはずでは。 免許の学科試験は、マルバツの二択問題。 わたしはこれが当に苦手である。 この話を始めるとどこからともなく必ず飛んでくる野次は、 「そんなもん、常識的に生きてたら解ける問題ばっかりや」 なのだが、のん気に嘲笑している者は今一度、胸に手を当て、当にそうだったのかよく思い出してほしい。 『問1. 踏切内を通行中に車が故障し、発煙筒を使い切ってしまったため、使用していた座布団を燃やして合図をする』 常識的に生きている人間が果たして、座布団に着火することができるだろ

    自動車教習おかわり列伝-6日目「踏切で座布団を燃やせ」|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/09/14
    昔の車ならもれなくメカ式の(各車輪のブレーキとワイヤーで繋がった)サイドブレーキが付いていたので、フットブレーキが効かなくなったらサイドを引け、が正解だったが、全電気制御の今の車ならスイッチを切る?
  • ドラマの撮影現場がすごすぎたので|岸田奈美|NamiKishida

    一ヶ月後、NHK BSプレミアムでドラマ化する『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を書いた岸田奈美です。 いまだに地元で信じてもらえてないですが当です。こんな、こんな自己紹介を、できる日が来るとは……! 台をもらった日、 セリフのうまさとキレの良さにゲラゲラ笑いました。 お話のふくらみと登場人物の成長に涙が出ました。 愛。 その二文字が詰まっている神ドラマ。いいですか。これは神ドラマになります。当です。信じてください。小躍りが止まらない。 5月14日から放送なので、みなさん、BSアンテナの準備をしておいてください。もしくは馴染みの電気屋をみつけて、軒先で見せてもらってください。昭和のように。 ところでわたし、今まで3回も現場に行きました。 いや、実は1回だけの予定だったんですけれども。 あまりに、あまりに愛もこだわりも驚きも、何もかもがすごすぎる現場だったので。3回

    ドラマの撮影現場がすごすぎたので|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/04/12
    お腹の子供が愛しいならそれでオッケー、国が全力で支えましょう、という国に俺はしたいなぁ。
  • 今日は堂々と勇ましく、そして明日は墓の前|岸田奈美|NamiKishida

    実は2年ほど、祖父母の遺骨がどこにあるか知らなかった。 父、父の兄、父の母、父の父という順番で亡くなったので、父方の家族はみんないなくなってしまった。 大工をやっていた祖父は、仕事中にノーヘルで屋根から落ちて大怪我をしてから入院を繰り返し、最期の10年は病院でほぼ寝たきりだったから、 「やっと四人そろって、チャーハンでも囲めてるんやろか」 火葬場からのぼる煙を見て、呑気に思った。 甲子園の祖父母の家へ遊びに行くたび「わてが作ったんやで!」と、得意顔で祖母がふるまってくれたチャーハンがものすごく美味しかった。あとから父がこそっと「騙されたらあかんぞ。あれは東海楼の持ち帰りや」と耳打ちしてきた。 道理で鉄人の味なわけである。見栄とは焦がし醤油の香り。 岸田家にとって、墓参りは縁遠い。 家族で墓参りをした記憶が一度もない。 親戚の墓がどれも遠いというのもあるし、母が病気をして車いすに乗るようにな

    今日は堂々と勇ましく、そして明日は墓の前|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/03/25
    このエントリは無料分しか読んでませんが、書店に今日入荷したての本はしっかり買わせていただきました。
  • 円安に喘ぐあんたに作業所クッキーを捧げたい|岸田奈美|NamiKishida

    みなさん、お元気でしょうか。なんや気ぜわしなって、夜中にガバ起きたりしてはりませんか。そうですか。 わてはもう無理そうです。 丸亀製麺から、とろ玉うどんが消えたからです。 ありとあらゆるストレスを、週に一度のとろ玉うどんバカいで急速治癒するタイプの人間なので、もう無理そうです。 卵の品切れだけではございませんね。 円安による品の値上げ。 節約につぐ節約で、図太い心も痩せ細ってまいりました。 家にいると暖房代も高いので、わたしよりも良い毛並みをしているダルメシアンの散歩を横目に見ながら、町をさまよっておりましたところ。 とある店先が、目に飛び込んできて。 『手作りバタークッキー 10枚入り 190円』 一旦通り過ぎ、しばし考え、後ずさりして戻った。 やっす。 でっかい立派なクッキーにありえない値段がついているので、昔、うちのじいちゃんが奈良で間違ってった鹿せんべいの類かと思った。 買っ

    円安に喘ぐあんたに作業所クッキーを捧げたい|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/03/12
    作業所クッキーが作られる事情と、それに伴って物価高の下でも原料の卵やバターや小麦粉の配合や製品の価格が変更しづらい事情について。
  • 誰もが小さな“自閉”を持って生きてる|岸田奈美|NamiKishida

    ダウン症の弟が、いっそう流暢にしゃべりはじめた。 半年前までは 「あー、ええ、おうですね、あい」 だったのが 「あーあ、また雨や。東京は雪やって。いやんなるわ」 になった。 26歳にして魅せる急激な成長に喜ぶ一方、逃げ出したオウムが知らん言葉を大量に覚えて戻ってきた時の怖さもある。 理由は言わずもがな、春からグループホームで暮らしはじめたからだ。 実家の和室をアジトに、悠々自適をかましていた弟にとって、はじめての共同生活。同居人にマナーを注意され、ベソかいて電話をしてきた夜もあった。 そんな弟にも、大切な友だちができた。 彼もまた知的障害があるのでお互いうまく話せないが、一発ギャグを交えつつ、楽しんでいるらしい。 いま最もアツいギャグは、ダンディ坂野の「ゲッツ!」なのは置いといて。彼がいちばん好きなものは野球だという。 「あんな、野球、いきたいねん」 ある日、大谷翔平選手の形態模写をしなが

    誰もが小さな“自閉”を持って生きてる|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/02/13
    無料部分しか読んでないが、三日の講習で強度行動障碍者を援護できる資格が取れるなら世話ないという印象を持った。オチが気になる。
  • 難関中学の入試問題の原作者になったけど設問が解けない理由を考えて、編集者にたどり着いた|岸田奈美|NamiKishida

    2023年2月3日、日付が変わるギリギリで思い出した豆をひとりで、鬼のお面をしながら、四方八方にまき散らしていたときでした。鬼みずから。少子化。 「岸田奈美さんのエッセイが、難関中学の今日の入試問題に出ました!」 なんですって! 調べたところ、東京の筑波大学附属駒場中学校だった。都内……偏差値……1位……!? 昨年は、京都大学医学部の入試でミャンマー行きのエッセイを、灘中学校の模試でバズった母のエッセイを使ってもらった。偏差値が、偏差値が軽々とスキップでわたしの頭を飛び越えていく。 出題されたのは、光村図書「飛ぶ教室 第65号(2021年4月発行)」に寄稿し、「ベスト・エッセイ2022(2022年8月発行)」に転載されたエッセイ。 ダウン症の弟が、ガラスを割った罪を、近所の子どもからなすりつけられそうになったときのこと。なつかしい。 設問も一緒に、読ませてもらったから、解こうとした。 結果

    難関中学の入試問題の原作者になったけど設問が解けない理由を考えて、編集者にたどり着いた|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2023/02/04
    (文芸)管理人「暴れて割った」著者脳内「暴れて、割った。」間の「、」から「暴れる」や「割る」をマンガのコマみたく頭に浮かべようとして失敗した様が見えるのだった。カギは読点の有無。
  • もうあかんわ日記リローデッド|岸田奈美|NamiKishida

    あなたの“あかん”は、どこから? わたしは、2週間から! なんかなあ、と思いはじめたのは、母の入院から1週間すぎた頃だった。 母は総胆管結石の手術が終わって、あともう1週間もすれば帰ってこられるだろうということで、わたしが実家の番をしていた。 パソコンと減らず口さえありゃどこでもできる仕事で、よかった。 犬の梅吉の世話と、隔週の土日にはグループホームから弟が帰ってくる。 梅吉は留守番ができず、散歩も吠えまくって苦手なので、わたしたちは家にずっといた。広いお庭で走り回らせてくれる犬の幼稚園があって、そこで週2回の朝から夕方まで、梅吉を預けた。 お迎えのカゴに入れられて 「なんでや!ワシがなにをしたんや!おい!説明せえ!」 という目で見てくる梅吉に「すまん」と謝り、わたしはルンルンで街に出かけた。わざわざめかしこんで、わざわざ百貨店のエルメスに並んで、わざわざ一番安い4,000円の爪やすりを買

    もうあかんわ日記リローデッド|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2022/12/29
    「ヤクルト23000。人間の許容量を越えた乳酸菌がここに。」爆笑。よくこんな表現思いつくなぁ。
  • 背負わない新聞の季節|岸田奈美|NamiKishida

    「しんどひい」 月曜日、母から電話があった。 2週間前からお腹の痛みをうったえ、先週、病院にかかったら「初期の胆嚢結石たんのうけっせきっぽいので、痛みが自然になくなるまで待ちましょう」といわれていた、母だ。 ちょっと良くなったり、ちょっと悪くなったりしながら、家にいた母だけど、わたしは知ってる。 「しんどひい」とだけ母が言うときは、マジでもうしんどいのだ。いつもは、どうでもええことをペラッペラと話し続けるので。5文字だけを絞り出すときは、いよいよやで。 京都から神戸の実家に帰り、ベッドに横たわる母の顔を見る。 えっ。 「黄色ォッッッッ!」 母の顔が黄色かった。黄色いってか、なんていうか、山吹色かな。紅葉が色づくこの季節、わが母も、グッと秋めいて参りました。 「そんなに黄色い?」 「黄色いで。ほら見て」 スマホで自撮りをして、渡した。 母はゼェゼェしながら笑って 「蜜柑みかんみたいやな……今

    背負わない新聞の季節|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2022/11/16
    (有料部分は読めない)強烈な黄疸の写真。そら即入院にもなるわ。無事だったのかどうか気がかり。
  • 伝説のワンメーターガール(姉のはなむけ日記/第18話)|岸田奈美|NamiKishida

    弟がグループホームへ入居する、前日。 今までは二泊三日、三泊四日と、少しずつグループホームへ泊まる日を増やしていたけど、これからは平日の間、ずっと泊まることになる。 「泊まる」から「暮らす」へ、変わるのだ。 土日はこれまで通り、神戸の実家で母とわたしと弟と犬の梅吉がそろうので、そこまで大げさな旅立ちではないのだが。 どうしてだか焦って、今のうちしかできない(ような気がするが、実際はそんなこともない)ことを、片っぱしから探した。 弟と三宮の町へ繰り出し、やたらと忙しい一日がはじまる。 まずは、パスポートを申請しに行った。 母は「あんた、いまパスポートなんか取っても、海外に行けるご時世やないんやし……」と困惑していた。 今までみたいに、平日、わたしと弟は自由に出歩けなくなる。日曜も車で送っていくし、疲れてるかもしれない。 そうなると、役所に行きづらくなる。 人間は!自立すると!役所に!行くの

    伝説のワンメーターガール(姉のはなむけ日記/第18話)|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2022/08/07
    有料シリーズにはコメントしないのが俺のデフォだけど例外。「愛想を良くしたくてもできない」俺のデフォルトがこれで、無表情ならマシな方。顔がこわばるとか別の感情を表す顔になるとかそんなもん。
  • いいから北海道発「トリトン」と「根室花まる」で陸上寿司を食べてくれ|岸田奈美|NamiKishida

    陸上寿司愛好会、発起人の岸田奈美です。 陸上寿司愛好会とは、陸でとれたネタの寿司をとにかく愛でまくる会です。表の顔は。 裏の顔としては「それって子どもがべるやつだよね」「寿司屋にきて魚をべないとか損してるよ」「雑魚寿司(笑)」などとおっしゃる方々の口へ、順番にシャリという名の思想を詰め込んでいく平和運動団体です。ストップ、寿司差別。 さて。 陸上寿司をべ続けてる愛好者も。 陸上寿司が気になるけど、やっぱり海中寿司がべたいという水陸両用者も。 北海道発の回転寿司屋に行ってくれ。 という話をします。 広大な北海道をその身に宿した、とにかく豪快で新鮮なネタ。料自給率198%というバグッた大地が“美味さ”の拳で殴りかかってくるのです。成すすべがない。敗戦の弁すらもシズル感にまみれること必至。 ※当然のようにPR企画ではありません。一銭ももらってません。愛はいつももらってます。その代わり、

    いいから北海道発「トリトン」と「根室花まる」で陸上寿司を食べてくれ|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2022/07/12
    前代未聞の飯テロが岸田奈美さんから放たれる。
  • 心が骨折したので、どすこいしんどみ日記|岸田奈美|NamiKishida

    新作を月4+過去作300以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚…

    心が骨折したので、どすこいしんどみ日記|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/12/19
    必要なだけ休んでから次の仕事にかかるようにしてください。岸田さんの次の本が読めなくなったら俺が泣くから、そこんとこよろしく。
  • 「死ね」と言ったあなたへ|岸田奈美|NamiKishida

    ※この記事は、後述の理由により、11月8日(月)23:59まで公開していました。しばらくマガジンのアーカイブとして読めます。 ※死を煽る内容ではないですが、「死ね」という言葉が頻出します。2021年11月8日(月)15:02追記:わたしが一番祈っていた形で、ここに登場する方々のもとに届きまして、もしかしたら先方の優しさかもしれないですし、そりゃそうだと思うんですが、ものすごく、ものすごく深い理解と希望を示してくださいました。届けてくださったみなさん、ありがとうございます。今年の10月、わたしがTwitterで投稿したダウン症の弟の写真に、「ガイジ(障害児)は生きる価値なし死ね」と返信をした人がいました。 その人のアカウントは、わたしだけではなく、障害のある人たちを手当り次第に攻撃するために作られていました。 それから、その人とご家族と、ダイレクトメッセージでやりとりをしました。返信について

    「死ね」と言ったあなたへ|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/11/06
    会員権を取るつもりはないのでやむなくぶくま。「ガイジ」が誰を指すのか気付かず首を傾げながら読んで、突然思い当たった。きっと、岸田さんの文章のおかげで、彼に関しては個体認識しているからだろう。
  • 霜月の岸田奈美〜浅ましい理由でサイン会を開く女〜|岸田奈美|NamiKishida

    はじめに息を吐くように週3日更新(月・水・金)を公言してきましたが、10月は息を吸うようにお休みをしてしまっておりました。 10月に新刊「傘のさし方がわからない」が発売になり、熱湯コマーシャル的PR出演や自主サイン会などで、全国をビョンビョンと飛び回らせていただいたからです。 新幹線での移動がね、もう。わたしの内蔵が時速285kmについていけてない。膵臓とかたぶんちょっと後ろに配置し直されたと思う。 そんなわけで、まばら更新となってしまいましたが、11月はすこしずつ元に戻してゆきたいと思います。 前月のお金の使いみち 岸田家の収入の90%を占めるい扶持こと、有料定期購読マガジン「キナリ★マガジン」を今月も元気にやってゆきます。 月初に課金なので、「読もうかな〜どうしよっかな〜」と思っていた方は、今日から登録されるのがオススメです。 10月はね! 「新刊をきっかけに、岸田家の味方をつくる」

    霜月の岸田奈美〜浅ましい理由でサイン会を開く女〜|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/11/02
    取り寄せて図書カードで買える手近な書店がなくなって「傘のさし方がわからない」の購入を保留していたある日、博多駅ビルの中に丸善があるのに気付いてふらりと入り検索したらあった。しかもサイン本。幸運だ。
  • 伊丹空港へ飛ぶはずが|岸田奈美|NamiKishida

    仕事で札幌へ行く用事ができたので、いま空港にいる。 京都からだと、伊丹空港までリムジンバスで一時間。関西空港までだと十五分ほど遠くなるし運賃も倍になるけど、こっちの方が航空チケットが安かったので、関西空港を選んだ。 空港までのリムジンバス乗り場は、京都駅の八条口にある。 八条口といっても、タクシーのロータリーから遠い位置にあるので、市街からタクシーで行く人は「八条口まで」じゃなくて「アバンティ前まで」って伝えた方がおすすめ!わたしみたいに時間ギリギリになって、息を切らして駆け抜けた道を振り返りたくなければな! 空港までの道のりをゆっくり歩けた記憶がないので、いつもどっかでキャリーバッグを死体のように引きずって走っている。心斎橋筋商店街の店先でチェーンに繋がれて投げ売りされてる安いやつだと一瞬でコロコロがお陀仏になったし、なにより空の状態でも重いので、わたしの持ち物のなかでもキャリーケースは

    伊丹空港へ飛ぶはずが|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/10/12
    「めちゃくちゃテキトーで雑な押し方」腰痛で通っている本邦の病院のリハビリ客(違)の車椅子の両手二台引き押しがこれと同じなのできっと伝説の熟練の技なのだと思う。
  • いなくなった、あの人のこと|岸田奈美|NamiKishida

    今年の3月ごろ、足を運ぶのにダントツで気が重い場所は、役所だった。 母が感染性心内膜炎というやばい病気で入院。 祖母の物忘れが急加速し、介護認定。 ダウン症の弟と祖母が一緒になるとトム&ジェリーからユーモアを抜いたような様相になることが増えたので、弟のグループホーム入居。 十年も精神病院で過ごしていた祖父が亡くなったので、相続。 わたしが東京から神戸へ出戻ることになったので、引っ越し。 一気に押し寄せてきたので、事あるごとにわたしは役所に行っていた。クエストを進行しに行ったはずが、なぜかいつもクエストを受注して帰ってきたような気がする。 書類を作るための書類に押す印鑑を証明するための書類を作るから、家に郵送する書類と他の書類を集めてもう一度来てね、みたいな。ドラクエの石板集めの方がまだ簡単。 でも、手続きが面倒というだけで、気が重かったわけじゃない。 手続きって、お金をもらうことでもあるか

    いなくなった、あの人のこと|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/10/05
    「子どもを守るには、親を守らなければならない。」ひとり親家庭の再分配後の貧困率を再分配前より高めている日本の国家は、この話を胸に深く刻むべきだ。
  • ゆでたまごは、美しい人の美しい話なのか|岸田奈美|NamiKishida

    向田邦子さんのエッセイ「ゆでたまご」が、SNSで話題になっていた。嬉しい。声が裏返った。 好きで好きで好きすぎるがゆえに、SNS上の反応ではまだ誰も書いていない感情がわたしのなかにあるので、いてもたってもいられず、恥も外聞もなく乗っかってみる。あとから恥ずかしくなってくると思うので、気が済んだらこのページは跡形もなく爆散する。 ゆでたまごは、向田邦子さんが「愛」について語る、文庫なら3ページに満たないエッセイだ。 「男どき女どき」に収録されているので、詳しくはおのおの手にとってほしい。 ざっとしたあらすじは、 小学校四年生の向田さんのクラスには、片足と片目の悪い“I”という子どもがいた。秋の遠足で、Iさんの母親が「これみんなで」と風呂敷と古新聞に包んだ大量のゆで卵を向田さんに押しつけ、向田さんはひるんだが、断ることができず受けとった。母親は歩いていくIの背中を見守っていた。運動会の徒競走で

    ゆでたまごは、美しい人の美しい話なのか|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/07/18
    元ネタの年代はいつ頃なんだろう。俺の生きてきた歳の間だと、卵の実質価格は一桁位下落している(価格がほぼ変わっていない)ので、いつ頃の話かによって印象ががらりと変わる。
  • 解体工事から逃げられない|岸田奈美|NamiKishida

    岸田奈美のnoteは、月曜・水曜・金曜のだいたい21時ごろの投稿です。予期せぬご近所トラブルなどで遅れることもあります。半分は無料で誰でも、半分はマガジン読者さんだけ読めます。もうすっかり暖かくなって……を通り越して、暑くなって。 いや暑いよね? おかしくない? ついこないだまで寒くなかった?いつ春がくるのかなって待ち構えてたけど?早すぎでは?しばらく会っとらん親戚の子の成長より早すぎでは? おっかしいなあ、去年もこんなもんだっけか、と一年前のnoteをさかのぼったら、家に飛び込んできたスズメバチにルンバで元気に応戦していました。オッケイ今年のわたしも元気でよかった! そういやルンバの中に入ったままのスズメバチ、取り出した記憶がないんだよな。ゴミは3ヶ月に1回くらい捨ててるんだけど(こまめのこの字もない)スズメバチらしきもんを見たことがない。気にせんとこ。 でもまさか、ね。 一年であの家を

    解体工事から逃げられない|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/05/18
    「うるっっっっっせええなあ!!!!!!」の上四行の表現が俺的にツボでバカウケた。
  • 陸上寿司愛好会を立ち上げることにした|岸田奈美|NamiKishida

    2021年11月1日、陸上寿司愛好会のWEBサイトがオープンしました!今後の最新情報はこちらでご確認ください。 お寿司は好きですか。わたしは好きです。この世にお寿司は星の数ほどあれど、どんなお寿司がいちばん好きですか。 大トロ? サーモン? 煮穴子?焼穴子? わたしはね マヨコーン軍艦。 めちゃくちゃうまい。頭がバカになるかと思うほどうまい。だけどこいつは回ってるところしか見たことがない。回ってない寿司屋にはいない。回ってない寿司屋より、回ってる寿司屋のほうが嬉しい。 正直なところ、全皿これでいい。びっくらポンはマヨコーン軍艦で全弾BETしたい。 でも、大人になってから寿司屋でこれを頼むと、家族や友人から 「ええっ、ここにきて魚をべないの?」 「寿司屋に来なくていいじゃん!損してるよ!」 「ってか家でべたら?」 と笑われてしまう。 うるせえ好きなもんをべてなにが悪い、家で作ったら酢飯

    陸上寿司愛好会を立ち上げることにした|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/05/07
    (寿司だけにネタタグ)おかずしじゃだめなの?陸寿司。▼納豆巻きとか納豆軍艦とかはとりあえず確保します。
  • 四十九日は、阪神甲子園球場で会いましょう|岸田奈美|NamiKishida

    「岸田さんのうしろに、亡くなったおじいさんがうろうろしてらっしゃいます。いえ、未練とかじゃなくて、特になにか言いたいことがあるわけではないけど、楽しくてついてきちゃってるみたいで」 いろいろ視える人から、会うやいなや、言われた。 霊を信じるかどうかを語りだすとえらいことになるので、ここでは置いておくとして、単純にじいちゃんがおもしろすぎるので、信じることにした。 こういうのは、自分がどう考えれば楽しくなるか、もとい救われるかが、なにより重要ではないか。 最後にじいちゃんの顔を見たのは、2月24日。 寝落ちするようにスッと亡くなる、6日前だった。 「じいちゃん、なんか、やりたいことないか?」 「こう、し、えん」 脳挫傷の後遺症で意識がはっきりしてなく、酸素マスクでふがふがしているので、ほとんどなにを言っているかわからないじいちゃんから、わたしが唯一聞き取れた言葉であった。 甲子園。 じいちゃ

    四十九日は、阪神甲子園球場で会いましょう|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/04/19
    「楽しくてついてきちゃってるみたいで」岸田奈美さんの人徳は死んだおじいさんまで引きつけて放さない。
  • もうあかんわ日記を終わります|岸田奈美|NamiKishida

    3月10日から毎日書き続けてきた「もうあかんわ日記」。 なんと、37日分もありました。 奇しくも37日という日々は、2001年、漁師の武智三繁さんが太平洋でたったひとり漂流し、生還を果たすまでの日数でもあります。 武智さんは「あきらめたから、生きられた」と綴った。いまのわたしは、その意味が、すごくよくわかります。 母が感染性心内膜炎というドヤバい病気で、死ぬかもしれん手術をして、あれよあれよと入院になって。 だましだましやってきたばあちゃんの、物忘れやら何やらのアレがはじまり、福祉の手続きに追われて。 家事や健康管理の手が回らなくなった家から、弟がグループホームに旅立つことになって。 その間に、じいちゃんが亡くなったり、家電がバタバタと矢折れ力尽きていったり、あとなんだ、そうだ、鳩が飛んできたり。 日にち薬というラストエリクサー並みの万能薬がこの世界にはあるので、確実にズルズルと前へ進んで

    もうあかんわ日記を終わります|岸田奈美|NamiKishida
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    BUNTEN 2021/04/16
    「今回、病気になってよかったとか、意味があったとか、思う?」 「思うわけないやん!やってられへんでこんなもん!」深く同意する。▼日常の支援までする資力はないので、せめて本は買わせてください。