――日本銀行が4月に発表した“異次元”金融緩和に対し、国内では期待と不安の声があり、国外でも賛否両論が出ています。どうお考えですか? 今の世界の経済状況での量的緩和は、それほどよい結果をもたらすとは思いませんし、むしろ大きなリスクを伴います。 日本でのリスクは、まずは長期金利への影響です。日本は対国内総生産(GDP)比200%超と巨額の公的債務を抱えています。数年後に公的債務の金利が上昇すれば、国内総生産(GDP)でこれをカバーしないといけません。 すでに大きな財政赤字があるのに、さらに3~4%、あるいは5%の金利上昇分を、果たしてGDPでカバーできるでしょうか。 また、日本の銀行は多くの日本国債を保有していますが、過度のインフレと金利上昇、国債価格の暴落が同時に起きれば、大打撃を受けませす。 そうなるとわかれば、国民や企業は資産を一気に海外に移すでしょう。いわゆるキャピタルフライトが起こ
名目金利上昇の見通しが低下見通しより優勢に 実際に名目金利が高騰したのは、次の二つの変化が生じたからだと考えられる。第一は、実質金利の十分な引き下げは成功しないとの見通しが強まったこと。もう一つは、物価上昇の見通しが強まったことだ。 物価が上昇するルートとして、二つの可能性がある。一つは、円安による輸入物価の上昇だ。為替レートが1ドル=100円の大台を超えたため、とめどもない円安と輸入インフレが生じると考えられるに至った可能性がある。いま一つは、財政拡大による物価上昇だ。これは、実質金利をも上昇させるので、名目金利の上昇幅はより大きくなる。 いずれせよ、名目金利が、低下するのではなく上昇するという見通しが優勢になった。 では、マーケットはどの程度の物価上昇を予測しているのか? 前回、フォワードレートを推定した。そこで示したのは5月8日のデータに基づくもので、期間の経過にしたがって単調に上昇
5月15日、日銀は総額2.8兆円を市場に資金供給すると発表。通常より供給額を2兆円増やし、国債市場で1年物や2年物などの流通利回りが急ピッチで上昇したことに対応する。写真は日銀本店。昨年12月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao) [東京 15日 ロイター] 日銀は2営業日先となる17日付で総額2.8兆円を市場に資金供給すると発表した。共通担保方式で4月16日以来1カ月ぶりに供給額を2兆円追加し、急ピッチな国債利回りの上昇に対応する狙い。
新型オペレーション(新型オペ)は、正式名称を「固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション」といいます。 日本銀行の公開市場操作の一つで、日本銀行が金融機関に対して、適格担保を裏づけに、政策金利と同水準の極めて低い固定金利で一定期間の資金を供給する(貸し出す)ものです。また、新型オペに対して、従来オペは「金利入札方式」で、高い金利を提示した金融機関から順番に資金を調達できる仕組みとなっています。 2009年12月に、急激な円高と株安で景気が悪化する恐れが高まったのを受け、日本銀行の臨時金融政策決定会合で初めて「新型オペ(固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション)」が導入されました。 ◎導入当初は、年0.1%の固定金利、期間3カ月の資金(10兆円)を短期金融市場に供給し、また2010年3月には供給目標が20兆円に引き上げられた。 ◎その後、2010年8月には、期間3カ月に加えて、期間6カ
今回はかなりマニアックな話です。恐らくインタバンク関係者か、中央銀行研究者(そんな人いるのかな?)、日銀志望の学生さん、といった方々が興味を持つ(持たないかもしれない)程度で、日銀関係者でもこの話にノリノリになる人は多くはない。でも、知っておくと、中長期的な調節体系の行方を知るうえで一つの手掛かりにはなる、と思う。 日銀は先ほど、「共通担保オペ」の導入を発表した。詳しくはこちら。手形オペがペーパーレス化して、名称が変わっただけに過ぎないが、このオペの基盤となっている「共通担保」という仕組みは、かなりの優れもの。どういうことかと言うと、「共通担保」の中に適格担保(国債や優良CPなど)を入れとけば、手形オペを通じて資金を取れるし、ロンバートで金を借りることも出来る。例えば、1000億円分の担保を入れとくと、900億円をオペで調達し、残りの分でロンバート調達にも使える。この仕組みがなければ、オペ
やまだ ひさし/1987年京都大学経済学部卒業、2003年法政大学大学院修士課程(経済学)修了。15年京都大学博士(経済学)。住友銀行(現三井住友銀行)、日本経済研究センター出向などを経て93年より日本総合研究所調査部出向。同経済研究センター所長、マクロ経済研究センター所長、ビジネス戦略研究センター所長などを経て11年より調査部長/チーフエコノミスト。17年理事、19年副理事長に就任し退任後、23年4月から現職。専門はマクロ経済分析、経済政策、労働経済。著書に「北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか(共著)、「市場主義3.0」、「デフレ反転の成長戦略『値下げ・賃下げの罠』からどう脱却するか」、「賃金デフレ」など。 検証!「アベノミクス」 安倍政権の経済政策である「アベノミクス」は上々の滑り出しを見せている。だが、それは「期待」を転換させた段階に過ぎず、政策体系としては発展途上であ
金利市場透視眼鏡 国債などの債券投資家のニーズに応えるコラム。執筆には第一線のエコノミストを迎え、債券市場の動向を分析、今後の展望を予測する。 バックナンバー一覧 日本銀行の新総裁となった黒田東彦氏は、就任会見で「2%の物価目標を2年程度で達成するため何でもやる」と述べた。日銀による資産買い入れ拡大への期待が一層高まった格好だが、黒田総裁は国債買い入れについて「国庫短期証券のような短期金利に近い水準の国債購入に政策効果がない」ことを強調した。国庫短期証券ではなく期間の長い国債の買い入れを大幅に増額すると示唆したわけであり、債券市場では10年債利回りが0.6%を大きく割り込んだ。 ただし、今回の金利低下には特殊要因もある。円安と株高が急速に進んだことで、年金によるアセットアロケーション(資産配分)見直しが発生したのだ。1月から3月にかけて、年金は大規模に外貨建て資産や株を売って円債を買う動き
2013年01月19日12:27 カテゴリ経済テクニカル 浜田宏一氏のゾンビ経済学 話題の浜田宏一氏が外国人記者クラブで講演した。市場では「1ドル=100円が適正」という発言が材料になっているが、問題は話の中身の古臭さだ。こういうとっくに死んだはずのゾンビ経済学が政権に影響を及ぼすのは困ったものだ(テクニカル)。 彼の話は「円高の犯人は日銀だ」ということに尽きるが、これに対する反論は簡単だ。日銀の緩和が足りなくて円高になったのなら、なぜ今は円安になっているのか。浜田氏によれば日銀の量的緩和はまったく足りないのに、安倍首相の口先介入で円が1割近く下がったのはなぜだろうか。 JBpressでも書いたように、これは為替レートを動かすのが通貨供給ではなく相場観であることを示している。2008年以降の円高の最大の原因は、多くの為替トレーダーがいうように、ユーロ危機などによるリスクオフの動きで日本に資
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