「毎日宅配すんねん。雨が降っても雪が降っても、コロナが来ても。毎日毎日」 つまずいて転んで這いつくばって、立ち上がって、自分の足で歩き出した亜子(仁村紗和)がついに辿り着いた境地。去る9月29日、NHKの「夜ドラ」『あなたのブツが、ここに』(以下あなブツ)が最終回をむかえた。いまだかつてないほどコロナ禍の現実に肉迫しながら、あざとい「センセーショナルさ」を一切排除し、登場人物たちの「日常」を粘り強く描ききった傑作だった。 「人の営み」や「生活」が極限まで「自然に見える」フィクションだった。「神は細部に宿る」というが、たとえば第6話、亜子が荷物を運んだ得意先のさなえ(藤田千代美)の部屋には、手作りの「お薬カレンダー」と「することメモ」が貼ってある。それがほんの数秒映ることで、さなえが独居老人であること、離れて住む家族がそれを貼っていったこと、近頃さなえの物忘れが進行していることがわかる。ほん
気づけば、世界がコロナ禍に飲み込まれてから2年半以上の月日が経っていた。その間にもエンターテインメントの作り手たちは「Show Must Go On」の精神で、その都度、「今だからこそ作る意義がある」ドラマを生み出してきた。緊急事態宣言下で通常の撮影が行えなかった2020年春には、リモート撮影を取り入れた実験的なドラマが続々と登場した。同年夏以降に制作されたドラマには、現実世界とリンクして登場人物がマスクをしている作品がいくつもあった。あるいは逆に、「こんな時だからこそ現実から離れて楽しんでほしい」との願いからか、顕世とは全く別次元のファンタジーを描いた作品もあった。 そんな中、この夏放送を開始した「夜ドラ」『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)は、コロナ禍が始まってから2年半の今だからこそ描けるドラマと言えるかもしれない。これまでに登場した「コロナ禍ドラマ」のどれよりもリアルで、どれよ
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