「卵はもう以前の価格には戻らないだろう」――。卵問題に詳しい元東京農業大教授の信岡誠治さん(70)はそう予想する。鳥インフルエンザの感染拡大などをきっかけに、例年にない高値が続く卵。いつかは下がると多くの消費者は願っているだろうが、そうはならない事情があるという。「物価の優等生」と呼ばれてきた卵に今、何が起きているのか。【聞き手・宇田川恵】 中国の大量輸入に始まった餌代の高騰 ――卵の価格の高騰は鳥インフルエンザの感染拡大による供給量の減少などが原因ですね。 ◆それもありますが、一番の要因は鶏の餌代の高騰です。それは2020年に中国がトウモロコシの大量輸入に乗り出したことから始まりました。21年には中国の輸入量は約3000万トンに上り、一気に世界最大の輸入国になったのです。中国はそれまでトウモロコシをほぼ自給していました。その政策は変わらないとみられていたため、世界は衝撃を受けました。 ―