男性はなぜ寿命が短く、病気になりやすく、自殺率が高いのか。兵士、消防士、炭鉱労働者など危険な職業に就くのはなぜ男性が大半なのか。アメリカの男性解放運動を先導してきたワレン・ファレル氏の著書『男性権力の神話』の訳者である久米泰介氏は、女性差別の解消が進む一方、男性は「使い捨てられる性」として差別を受け続けているにもかかわらず問題視されることは少ないと指摘する。これまで「男性の権力」と思われていたことは、実は性役割による刷り込みに過ぎなかったのか。 女性差別に比べて、男性差別という言葉自体あまり聞くことがありませんが、久米さんは家族学をアメリカで研究されて、女性の社会進出が進むほど男性差別の問題が表に出てくることに気付かれたそうですね。まず、そうした研究をするようになったきっかけを教えてください。 久米:大学では社会心理学を専攻して、もともとジェンダーには興味がありました。特に僕ぐらいの世代だ
6月7日、驟雨に見舞われた東京を離れて9時間半。飛行機と電車、フェリーを乗り継いではるばるやってきたのは、島根県海士(あま)町。隠岐諸島の真ん中に位置する離島だ。 海士町はシロイカとカキ、干しなまこが名産の漁業の町。1周約90キロメートルと比較的大きな島だが、人口は約2400人。一見すると過疎化が進むただの離島のように映る。 だがこの町がユニークなのは、人口の2割近くに相当する約300人が、都会から移住した「Iターン」の若者である点だ。しかもトヨタ自動車やソニーなどの一流企業を辞めた、いわゆるエリートが多い。海士町の何が優秀な若者たちを惹きつけるのか、その謎を探るため、私は来島した。 その初日。Iターンの若者を中心に取材を進める中、町中である若者とすれ違った。切れ長の目、真ん中で分けたサラサラの髪。その時は、どこかで見たことがある人だな、としか思わなかったが、その後にひょんなことからシナプ
清野 由美 ジャーナリスト 1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。 この著者の記事を見る
本連載では、この夏まで米ビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、欧米を中心とした海外の経営学の知見を紹介していきます。 さて、最近日本でよく聞かれるのが「ダイバーシティ経営」という言葉です。ダイバーシティとは「人の多様性」のことで、ダイバーシティ経営とは「女性・外国人などを積極的に登用することで、組織の活性化・企業価値の向上をはかる」という意味で使われるようです(参考)。実際、女性・外国人を積極的に登用する企業は今注目されていますし、安倍晋三首相もこの風潮を後押ししているようです。 ところが、実は世界の経営学では、上記とまったく逆の主張がされています。すなわち「性別・国籍などを多様化することは、組織のパフォーマンス向上に良い影響を及ぼさないばかりか、マイナスの影響を与えることもある」という研究結果が得られているのです。 なぜ「ダイバーシティー経営」は組織にマイナスなのでしょうか。何が問
現在はグーグルジャパンの顔として活躍する徳生健太郎。彼は日本でも屈指の進学校だった高校を中退して渡米。アメリカの大学で学び、シリコンバレーでベンチャー企業を経て、グーグルに入社したが、大学在学中に日本で就職することは考えなくなっていたという。また、大学時代から、後のキャリアに直結する学びの機会を得ている。 「アメリカの大学は、卒業したら即戦力にならなければいけない、という感覚を誰もが持っているんです。だから、勉強も真剣にやるし、それ以外についても、将来を意識した取り組みを進めている。もっと言えば、早い段階で専門や専攻を絞り込んでいくし、やってみたい方向も定めるんです」 徳生が大学院を卒業してから就職したのは、剛体力学のシミュレーションをするソフトウェアを作っていた会社だったが、実は大学1年の頃から徳生はこの分野に興味を持っていた。 「物理が好きだったことと、コンピューターを使って自然の現象
「日中関係が微妙なこういう時期、AKB48が好きだっていう若い中国人はすごくプレッシャーを感じるわけですよ。ほら、だって、彼ら一人ひとりは自称『プチ日本評論家』なわけですからね。板挟みになって、正直つらかったと思います」 あれは9月中旬、日経ビジネスオンラインから「えっ、『日本は中国と戦争したがっている』って?」の執筆を依頼されたころだ。尖閣問題で反日デモが激しく燃え上がる中、以前取材を通して知り合った王一凡(29歳)と再会した。彼は、私が王に会った目的(尖閣問題についての意見)とは一見、無関係かに思える内容をいきなり話し始めた。 その話とは、「AKB48はなぜ、中国でこんなにも人気があるのか?」についてである。 王は以前、中国で雑誌記者をしていたことがあり、日本のオタク文化に非常に詳しい。 「中国でAKB48のファンは、百度(中国の大手ネットサービス)のBBSユーザーだけで約10万人、実
「米国なら50万円でも数千人集まるのに日本ではタダにしても数百人ですよね」。 セミナーやカンファレンス、シンポジウムといった人が集まる催しの話である。本職は記者のはずだが催しを企画することもある。趣旨と題名の決定、プログラムの作成と講師依頼、催しの告知、当日の立ち会い、報告記事の執筆などやることは結構ある。数えたことはないもののかかわった催しの数は50回を超えているだろう。 企業や各種団体にも似た仕事を担当している方がおられる。本業を補完するためにセミナーを企画している人たちである。お会いすると必ずといっていいくらい冒頭の話になる。 例えば、IT(情報技術)関連のカンファレンスを開く場合、米国ではオーランドやラスベガスといった場所で1週間くらい開かれる。色々な値段があるものの数千ドルはする。 驚くのは冒頭の発言の通り、数千ドルを払ってやってくる参加者が数千人いることだ。失礼ながら日本で無名
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 月間ユニークユーザー数、884万人、月間ページビュー数、4億6000万(2010年3月)を誇る国内ナンバーワンの料理レシピの投稿・検索サイト「クックパッド」。 日常的に料理をする人はもちろんのこと、たまにしか包丁を握らない人でもクックパッドのウェブサイトを一度は訪れたことがあるのではないか。 2ちゃんねるやTwitterを凌駕する それくらい、クックパッドはレシピの投稿・検索サイトとして不動の地位を築いているように思える。なにしろ、母の日とカミサンの誕生日くらいしか、料理をしない筆者でさえも、クックパッドは何度かのぞき、お世話になったことがあるくらいだ。 ページビュー数の比較でいえば、この4億6000万という数字は、2ちゃんねるや今流行りのT
おもしろい本を読んでいるうちに夜が明けてしまうことがある。逆に、ほんの数分のプレゼンテーションが何時間にも思えてしまうことがある。 楽しいことは夢中になって取り組めるのに、興味の向かないことは退屈で仕方ない。楽しく過ごしたほうが心身にとってプラスになることは多そうだ。 では、我を忘れるほどハマる“没頭”とはどういう状態を指し、どのように人は没頭に導かれていくのか。そんな無我夢中状態の解明を目指した心理学の理論があるという。「フロー理論」だ。 フロー理論は、深い楽しさを人にもたらす没頭状態がいかに訪れるかを、人の主観的な経験に着目して明らかにした心理学のモデル。今回登場いただくのは、フロー理論の研究者、法政大学の浅川希洋志さんだ。人が夢中になる状態は作りだすことができるのだろうか。 --楽しいことはあっという間に過ぎてしまったり、無我夢中に没頭していると寝食を忘れたりといったことを経験するこ
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