今回、福島刑務所を視察したのには理由がある。あまり知られていないが、じつは2022年3月、ここで60代の男性受刑者が他の受刑者から集団で暴行を受け、死亡する事件が発生。地元誌「政経東北」によると、死亡した男性は脳梗塞の影響で失禁を繰り返していたが、同室の受刑者がこれに苛立ち、日常的に殴る蹴るの暴行に及んでいた。被害者は複数回にわたり転室を願い出たにもかかわらず、刑務官が放置したとも報じられ、事件に至るまでの対応も問題視されている。 福島刑務所は2000年代に受刑者の過剰収容が問題となった際、多数の職員を雇用したが、法務省はそれ故に刑務官への教育が不十分だったのではないかと考えた。杉が自ら足を運んだのは人材育成と指導のためだった。 「受刑者をきちんと見ていれば察知できるはずだろう。どれだけ仕事をおろそかにしていたのか……。見て見ぬふりしたことが、後で必ず問題になる。こういうことを言うと、みん