■ 不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)(鏡 明) 字が小さめの本から片付けていこうと思って掘り出したのが、鏡明の「数少ない完結した」この作品。書かれたのは30年くらい前だが、2007年に創元が復刻したのを買ったまま眠らせてあったのだった。 世界にたったひとつのタイムマシンを個人が所有して遠慮会釈なしに過去を変え、世界がどんどん変容していく世界。ちょうど慣性のように元の時代の記憶がわずかに残るというのがミソで、多世界解釈だが「隣」の世界と完全に分離していない感じなのが設定面での面白いところ。もちろんこれによって人々の生活や精神がどのように変異するかというあたりがSF的に面白いところで、解説にもあるけど雰囲気はディック的な様相だ(まぁディックは嫌いなわけだが)。 そんな過去という存在そのものが怪しげな世界で探偵モノをやるという不条理さが面白い……はずなんだけど、前半はそれほど設定が生きてな