骨董は辞書的な定義では「美術的価値や希少性の高い古物」と「今では役に立たなくなった古物」の二つの意味がある。テレビの『なんでも鑑定団』などを見ていてもそれは納得できるだろう。古ぼけて小汚い軸や茶碗が昔の珍しい美術品だと鑑定され、高値が付くと、とたんに有難く見えてくる。その反対に見た目通りのガラクタとわかれば、少なくとも所有者はおおいに落胆してしまう。役立たずだけど、価値ある貴重な古物だと思っていたのである。 つまり骨董は文化だということだ。だから骨董の世界に〝素晴らしい贋作〟は存在しない。古い文化財を装った贋作だとわかった時点でそれは無価値である(加藤唐九郎が作った写し物なら別だが)。また「気に入っている酒器だから真贋や値段は気にしない」というのも嘘である。たいていの新作は骨董品より遙かに使い勝手が良く、美的にも洗練された物が多い。趣味だろうと過去の時代の文化の香りのする物を手元に置きたい