肥大化する、現・成田国際空港建設反対闘争の主語現・成田国際空港建設問題をめぐって1960年代から展開された「三里塚闘争」。各々の立場で闘った当事者の「あの時代」と「その後の50年」に、代島治彦が切り込んだ。 文=黒嵜想(批評家) 映画『三里塚のイカロス』より © 2017 三里塚のイカロス製作委員会 多数の主語が絡み合う闘争に、我々はどう向き合うか 『三里塚のイカロス』は、現・成田国際空港建設問題をめぐって1960年代から数十年にわたって展開された、いわゆる「三里塚闘争」についてのドキュメンタリー映画である。本作の特色は前作『三里塚に生きる』と同様、ときにすれ違う多数の当事者たちの証言をそのままに収めた「多声的口承映画」である点だ。 その語り口は煮え切らない。取材対象たる当事者個々人の言ももちろんだが、本作を通しての監督の立場も匿名的だ。空港建設に伴って過激化する反対運動、その果ての内ゲバ