栗原裕一郎『<盗作>の文学史』(新曜社) 先日本書の著者である栗原裕一郎さんらとご一緒させていただく機会があり、その集まりをセッティングして下さったソフトバンク・パブリッシングの上林さんの、「この人は献本が届くのに半年かかるくらい田舎に住んでるから――」という言葉に栗原さんが気前良く見本誌を当方にくださり、栗原さんの初の単著を発売前に読むことができた。 全体で500ページに迫る文句なしの大著である(目次詳細)。はじめその厚さにたじろいだ。そして本当に本書を読んで楽しめるか危惧する気持ちが正直あった。というのも、理由は後述するが、本書の叩き台となった大月隆寛監修『田口ランディ その「盗作=万引き」の研究』周辺(この本自体は読んでいないのでこういう書き方になる)を必ずしも好意的に見ていなかったからである。 しかし、本書はその危惧を覆して余りある面白い本だった。帰りの新幹線でこの厚い本を興奮しな