私は今年、上海で育ての親を亡くした。 と言っても死んだのは人間ではない。「季風書園」という名前の書店である。閉店は2018年1月31日なので、正確に言えばまだ死んではいない。今年の4月、店舗の貸し主である上海図書館から余命10カ月の宣告を受けた、すなわち契約を更新しないことを通知されたと公表してしばらくは、この店ならではの在庫をいまのうちに求めようという常連客が連日駆けつけたため、見舞客が大勢訪れる病室のような明るさのようなものも残っていた。ただ、本よりも空間の方が本棚に目立ち始めるにつれ見舞客ならぬ常連客も1人減り2人減りし、私が最後に訪れた12月初旬の店内にもはや生気はなく、命の焔が燃え尽きる前の華やぎのようなものも既に残ってはいなかった。 季風書園は1997年、中国政府のシンクタンクである社会科学院で哲学の研究をしていた厳搏非氏が同院を辞め上海で立ち上げた。中国では全土が大混乱に陥っ