アフリカ中部を流れる大河は住民の暮らしに欠かせない交通路だが、危険な無法地帯でもある。貨物船や丸木舟の旅は、トラブルの連続だった。 文=ロバート・ドレイパー/写真=パスカル・メートル 全長およそ4700キロのコンゴ川は、アフリカ大陸の9カ国に及ぶ広大な流域をもつが、やはりコンゴ民主共和国との結びつきが圧倒的に強い。 「コンゴ川はわが国の背骨です」と、キンシャサ大学の歴史学教授イジドール・ンデウェル・エ・ンジエムは話す。「背骨がなければ人間は立てません」。コンゴ川がなければ、この国は立ち行かなくなるという意味だろう。 コンゴ川は源流域から北へ向かった後、中流のボヨマ滝(英国の探検家ヘンリー・モートン・スタンリーにちなんでスタンリー滝と呼ばれていた)を越えた辺りで北西へと進路を変え、その後、南西へ下って大西洋に注ぐ。 川を管理する官庁が存在しないため、誰もが平等に利用できる自由地帯になっている