「風鈴の涼しげな音色が響いている」というような言い回しの原稿が出てくる季節になった。でも、どこか落ち着かない。「風鈴の涼しげな音が響く」「風鈴が涼しげな音色で鳴っている」ならわかるが、「音色(ねいろ)が響く」というのは奇妙な言い方だ。 過去の紙面を調べると「オルゴールの音色が響く」「胡弓(こきゅう)の哀愁漂う音色が響く」「太鼓の音色を響かせ……」などと、けっこう使われている。インターネットをのぞいてみると、やはり、それなりに出てくる。抵抗感はないのかもしれない。となると、奇妙だと感じるこちらのほうがおかしいのか。 「その音の特色となるような、感じ。おんしょく。▽ピアノとオルガンとでは、高さ・強さの等しい音を出しても、違った感じがする。これが音色の違い」(岩波国語辞典)。音の「色合い」であり「音の感じ、特性」だ。だから夏に「涼しげ」に、あるいは秋の頃には「さびしげ」に聞こえるのは、風鈴の持つ