2019年のノーベル経済学賞の授賞対象となった、途上国の経済を分析する開発経済学に注目が集まっている。学界では2000年代に入ったころから開発経済学の「第2次ブーム」が始まり、今回のノーベル賞につながったといえる。現在のブームをけん引しているのは、「ランダム化比較試験」(RCT)と呼ばれる新しい研究手法や、従来の経済学では使われてこなかった衛星画像などのデータを活用する研究である。第1次ブーム
論考 マクロ経済・経済政策 労働分配率は低下しているのか-税務統計との比較による検討(上)〈政策データウォッチ(10)〉 May 23, 2019 経済政策 EBPM リアルタイムデータ 東京財団政策研究所「リアルタイムデータ等研究会」座長 神奈川大学経済学部 教授 飯塚 信夫 はじめに 生み出された付加価値のうち、労働者にどれだけ還元されているかを示す「労働分配率」について、代表的な2つの指標の動きが近年異なっている。1つは、GDP統計(国民経済計算)における雇用者報酬÷国民所得(要素費用表示)であり、もう1つは法人企業統計年報における人件費[1]÷付加価値である。図1に示したように、前者は2013年度以降、横ばいで推移しているのに対し、後者は低下を続け、2017年度には1974年ぶりの低水準となった。 このいずれが実勢を表しているのであろうか。本稿では、税務統計との比較を通じて検討した
コンテンツブロックが有効であることを検知しました。 このサイトを利用するには、コンテンツブロック機能(広告ブロック機能を持つ拡張機能等)を無効にしてページを再読み込みしてください。 ✕
厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正問題が国会で問題になっています。「アベノミクスの成果を強調するために結果をねじ曲げたのではないか」という、うがった見方をする人もいるようです。国会の議論では、「共通事業所ベースの数字が正しく、そのベースの実質賃金の伸び率を公表しないのはおかしい」という趣旨の意見もあります。 しかし、2018年の数字が強めに出たのは、同年1月に実施された標本交替の影響が少なからず働いている面もあり、その際に「経済センサス-基礎調査」の影響などが出たようです。今回は「毎月勤労統計」について考察してみたいと思います。 統計不正問題に潜む“3つの誤り” 「毎月勤労統計」に関する不適切な調査が問題になっています。主な論点は、次の3つです。 第1の問題は、500人以上規模の事業所については全数調査をしなければならないのに、東京都の分で約3分の1のサンプルしか調べていなかったという、明
[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 企業を分析する際に、負債だけをみる人は真剣な投資家とは言えないだろう。しかし、こと国の分析となると、その国の富よりも債務にばかり着目するファンドマネジャーは多い。 国際通貨基金(IMF)は、国家財務の資産側にもスポットライトを当てることで、バランスを取り戻そうと努めている。 IMFが10日公表した世界経済生産の61%を占める31カ国の財政モニター報告書には、驚くべき指摘が並んでいる。公的部門の正味資産の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、公的債務の合計は同94%であり、資産はその倍以上あるということになる。 巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日
[オークランド(カリフォルニア州)/カントン(ニューヨーク州)/ワシントン 5日 ロイター] - 米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。失業率低下がようやく賃金を押し上げ始めていることを示している。 2月5日、米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。カリフォルニア州で1月撮影(2018年 ロイター/Ann Saphir) 昨年は、全米で少なくとも半数の州において平均賃金が前年を大きく上回る3%超上昇した。金融危機による歴史的なリセッション(景気後退)の10年を経て、失業率が記録的低水準に迫った州の数も急増した。 州レベルで集計されたデータは、国家統計からは見えてこない転換点を示唆している可能性がある。 過去4年にわたり
この現象については、事の大小にかかわらず、全国の小中高生のいる家庭から非常にたくさんのご相談をいただきます。あまりの多さに驚くほどです。もしかしたら、大半の家庭で起こっている現象かもしれません。10年ほど前に登場したスマートフォン(以下、スマホ)、あのような魅力的な機器を持てば、その虜になるのは当然のことですね。大人も手放せなくなってしまうのですから、子どもの場合は言うまでもありません。似たケースでゲーム漬けという場合もありますが、この種のご相談では小学生の子どものケースが多く、特に幼い子に効果のある方法について筆者も過去記事(「1日6時間ゲームする子」に親ができること)を書いています。よろしければ今回の記事と併せてご覧ください。 今回は、高校生のご家庭からのご相談ということで、少し角度を変えてより根本的な対策についてお話ししようと思います。よくよく考えてみると、子どものスマホは親が働いて
ジャニーズ事務所を辞めた元SMAPメンバーの番組が、なにゆえ突然打ち切られてしまうのか? アニメ映画『この世界の片隅に』(東京テアトル)で声優を務め、イラストや音楽でも活躍しているのんは、なぜ本名の「能年玲奈」を名乗れず、テレビではほとんど見ることができないのか? ファンたちがいらだつのも当然であり、人気が高く視聴率も取れるはずなのだから、市場原理としてもおかしい。「フェアな競争が行われていないのではないか」という疑いが生じるのは、当然のことだろう。 そんななか、公正取引委員会が芸能やスポーツの世界に対しても調査を始めている。9月5日の第2回「人材と競争政策に関する検討会」に提出された和久井理子特任教授(大阪市立大学大学院法学研究科)の資料では、「スポーツ、芸能等を含む事業分野における慣行等の解明」が研究調査上の課題として明記されている。 芸能人の権利を守るべく活動している日本エンターテイ
筆坂秀世(政治評論家、元共産党政策委員長) いわゆる議員の「身体検査」というのは共産党には特にないと思う。プライバシーを調べて「おまえ、ああだろう、こうだろう」っていうのはたぶんない。たまたま耳に入ってくる話があれば別だろうけど、組織として「身体検査」をするというような習慣はまずない。共産党の場合、「私、立候補したいです」とか「選挙に出たいです」って、自分から言って立候補する制度というか習慣がそもそもないんです。あくまでもそれは全部、党が決定するんです。 たとえば、新宿区の区議会議員の場合、地区委員会の委員長を筆頭に常任委員がいます。「今度Aさんっていう人が引退するので、後の候補者に誰を立てようか。教師にいいのがいるが、教師をやめさせて落ちたらどうしよう。これは家庭の問題もあるから教師をやめさせてまで立てるわけにいかない」となった場合、「地域で熱心に活動してて地域に人望のある人がいる。この
アデア・ターナーが、近年の生産性の伸びの停滞からするとソローパラドックスはますます強まっている、と表題のProject Syndicate論説(原題は「Is Productivity Growth Becoming Irrelevant?」)で論じている。そして、投資の低迷*1、技能の不足、インフラの劣化、過剰な規制*2、企業間の技術格差*3、期待外れに終わっているIT、といった巷間良く挙げられる説明よりも問題の根は深いのだ、と主張している。ターナーによれば、生産性の伸びは豊かな社会では必然的に鈍化するもので、一人当たりGDPはもはや人々の厚生の指標とはならないのだという。 Our standard mental model of productivity growth reflects the transition from agriculture to industry. We sta
昨日エントリで紹介した表題の講演でバーナンキは、米経済の好調にも関わらず、トランプ現象やサンダース現象を生み出したことに見られるように米国民のムードは明るくない、として、その背景にある4つの懸念すべき傾向を取り上げている。 平均的労働者の所得の停滞 社会的・経済的移動性の低下 社会的機能不全 経済的苦境に陥っている地域・集団における絶望感 トランプ現象で白人労働者層におけるその問題が注目されたが、機能不全が生じている範囲はもっと広い 政治的疎外と官民の機関への不信 特に米国では昔から政府への不信感が強い バーナンキはまた、米国の戦後史を振り返り、繁栄を謳歌していた1945-70年の期間と、日欧そして中国の台頭やロバート・ゴードンの言う例外的な技術的・経済的進歩の終焉やベトナム戦争や公民権運動による社会の分裂によって米経済が余裕を失っていったそれ以降の期間を対比させている。そして、レーガノミ
前回エントリには大きな反響があった。 はてなブックマークの人気エントリ1位になったし、PVは10万を優に超えている。 保険会社が正当な(裁判をしたとすれば認められるべき)損害賠償額から大きくかけ離れた低額の提示をしてくるのが常であることは、弁護士には常識だ。 しかしこの反響の大きさを見ると、やはり一般の方にはあまり知られていなかったようだ。 そこで、なぜそんな無法が横行しているのかについて、ごく簡単に説明しておく。 保険会社がめいめい勝手に定めている、通称「任意保険基準」というのがある。保険会社はその都度のノリで適当に賠償金を提示するわけではなく、この基準に基づいて提示している。 これは裁判になった場合の、通称「裁判基準」よりも大幅に低い。 この基準に法的根拠はない。だから裁判になれば通るわけがない。そのことは保険会社も重々承知している。*1 でも大抵のケースではこの基準で丸め込んでしまえ
舞姫の主人公をボコボコにする小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介したいと思います。 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 冒険旅行ブーム 島村隼人、エリスに刺されそうになり豊太郎を殴ることを決心する 舞姫との差異 ハイカラを討伐しよう アフリカ人と帰国しよう 世界統一ブームがあった 豊太郎廃人となる 舞姫のために 追記 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 森鴎外による舞姫っていう小説がある。舞姫の内容を知らない人のためにあらすじを書いておこう。 子供の頃からずっと勉強してた太田豊太郎は22歳になると国費でベルリンに留学、ところがヨーロッパの文化に触れ近代的自我に目覚めてすごい苦悩をする。色々あって豊太郎は踊り子のエリスと仲良くなるんだけど、ついでに無職になってしまう。親切な友達の紹介で職をゲットしたらエリスが妊娠、なんだかんだでロシアへ仕事に行くことになる。エリスは
トランプを支持した民主党系労働者 「打倒トランプへの険しい道のり」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50664)で述べたように、選挙後に現地入りした筆者が、民主党の党幹部、陣営関係者、議員らの口から耳にする内部批判は、1つは大統領選挙の候補者、政治家の人材をめぐる問題であるが、もう1つは陣営幹部の選挙戦略に向けられていた。 反省のポイントは、オハイオ州、ペンシルベニア州などの白人労働者票に対して有効なメッセージを打ち出すことを優先しなかった点だ。 しかも、彼らが悔やんでいるのは、製造業の疲弊に象徴される「格差と雇用」が有権者の関心事だった兆候を十分に掴んでいたのに、対応を重視しなかったことだ。 労働組合系の米民間団体「ワーキング・アメリカ」は、2015年12月から2016年1月にかけてオハイオ州とペンシルベニア州(主としてクリーブランドとピッツバーグ
ゲーム理論やマーケットデザインといったミクロ経済学を専門としている、気鋭の経済学者・安田洋祐氏。1980年生まれと若手研究者である氏は華麗なる経歴の持ち主だ。東京大学経済学部を首席で卒業し、プリンストン大学に留学後Ph.D.(博士号)を取得。情報番組などを通じて経済学をいかした知見を発信しており、そのわかりやすい解説には定評がある。前編では、安田氏の専門であるマッチングの仕組みを介護分野に応用するならば、我々にはどのような“利益”があるのか。その可能性を伺った。 文責/みんなの介護 マッチングの仕組みは介護にも応用できる みんなの介護 安田先生は大阪大学で教鞭をとり、研究活動だけでなく、テレビにも積極的に出演されています。今日は、社会保障についてお話を伺いつつ、先生のご専門分野についてもお話いただきたいと思います。まず、先生のご専門はどういった分野なのでしょう? 安田 社会保障というテーマ
――本書のどこが、小室さんにそんなに「刺さった」のでしょうか? 長寿化時代には、「脳の健康」の価値がいっそう大きくなるというところです。著者のリンダさんが言うように、人生が70歳で終わる時代と、100歳で終わる時代を比べたとき、50歳で働けなくなることのダメージは、100歳時代のほうがずっと大きいですよね。 日本は、週49時間以上働く人の割合が他国の2倍ほどもあります。非常に長時間労働の国ですから、脳のダメージを回復させるための睡眠が最も取れていない国なのですが、リンダさんの試算によると、2007年生まれの子どもの半数が到達する年齢は日本が群を抜いて長く、107歳だそうです(他国は104歳程度)。現役時代に最も脳を酷使している国民が最も長い寿命になるとどういうことが起きるか。せっかくの長寿も、後半になればなるほどつらい状況になってしまうわけです。日本人こそ、長寿社会のリスクに最も備える必要
というFT論説をGavyn Daviesが書いている(原題は「It’s the demography, stupid!」)。 そこで彼は、人口が自然利子率の低下に影響を与える経路として、以下の3つを挙げている*1。 労働供給の伸び率 労働供給の伸び率が低下して、労働に比べて資本が過剰になれば、資本の収益率は下がり、新規投資の魅力も薄れる。これは実質金利を下げる。 依存人口比率 労働者は退職者よりも貯蓄するため、依存人口比率が低いと、経済の貯蓄率が上がる。ベビーブーマーが労働力人口の一部だった2000年以前は、それによって先進国の貯蓄率が上がり、自然利子率は低下した。 ベビーブーマー退職後はこの傾向は逆転するはず。 平均寿命 退職年齢が同じままで平均寿命が延びると、人々は老後に備えて、働いている間の貯蓄を増やす。これは貯蓄率を上げ、自然利子率を下げる。 また彼は、人口動態が自然利子率に与えた
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く