論考 マクロ経済・経済政策 労働分配率は低下しているのか-税務統計との比較による検討(上)〈政策データウォッチ(10)〉 May 23, 2019 経済政策 EBPM リアルタイムデータ 東京財団政策研究所「リアルタイムデータ等研究会」座長 神奈川大学経済学部 教授 飯塚 信夫 はじめに 生み出された付加価値のうち、労働者にどれだけ還元されているかを示す「労働分配率」について、代表的な2つの指標の動きが近年異なっている。1つは、GDP統計(国民経済計算)における雇用者報酬÷国民所得(要素費用表示)であり、もう1つは法人企業統計年報における人件費[1]÷付加価値である。図1に示したように、前者は2013年度以降、横ばいで推移しているのに対し、後者は低下を続け、2017年度には1974年ぶりの低水準となった。 このいずれが実勢を表しているのであろうか。本稿では、税務統計との比較を通じて検討した