以下は映画『ミッドナイトスワン』を鑑賞した上での感想です。ネタバレを含みます。 たしかにだいぶ古くさい、のだけどこの映画にはすでに数多くの批判が寄せられている。その代表といえるのが松岡宗嗣氏のこの記事だろう。 松岡氏の意見はきわめてまっとうだ。いうまでもなくちゃんとしている。わたしは専門家ではなく、ここまでクリアに問題点を整理する能力はないが、観ているときにかなり近い感覚は持ったし、いま現在も大筋としては賛同している。 ……のだが、この意見は、「最新の議論を踏まえてアップデートされた理想のトランスジェンダー女性像」にこだわりすぎていると感じた。たしかにこの作品は「20年前だったら新しかったかもしれない」と思わせる描写にあふれており、もはや2020年においては真に受けないでほしいと思う要素が多い。松岡氏が指摘している「母性」の問題もそのひとつだ。トランス女性にも母性はあるのだ、という宣言は、