出版の第二思春期? 発売から九年、『批評メディア論』が「定本」と冠され岩波現代文庫に入った。 この間、出版界もそれをとりまく環境も劇的に変化した。「劇的に変化した」もテンプレートと化した。もう劇的ともいえそうにない。あのころ、全国の書店の数が一万を割るのではと危惧されたものだけれど、そののち毎年数百店ずつコンスタントに減少していって、いまでは八千店を割る勢いだ。 わたしもしばらく住んだ南阿佐ヶ谷の「書原(しょげん)」が消えたのはもう七年前のこと。最近、阿佐ヶ谷の「書楽」閉店がこれにつづき、かつて文士が集住した阿佐ヶ谷の街からとうとう本屋が一軒もなくなる……なんて冗談みたいな事態の到来を目前に、マスコミやSNSが騒いだ。こういう場合のお決まりで、ふだん本はアマゾンで買って配達業者を酷使している人間も、パロディでしかない読書好きキャラの自分を信じてうたがわない人間も、ここぞとばかりに残念がって