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ブックマーク / www.shenmacro.com (62)

  • 米国経済に中国が与え得る影響の論文 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    パンデミック後の中国経済の不確実性の捉え方は極めて難しい課題になっている。チャイナショックの時と違って、中国がデフレーションに転落したという事象は先進諸国にマクロなインパクトをほとんどもたらさなかった。中国からのデフレ輸出や不況輸出も目立って観測されておらず、先進諸国の経済を分析する際にどのように中国ストーリーを添加すればいいのか手探りになっている。ブログなどは「影響は非連続的に発現するだろう」と言葉を弄しているが、とにかく「中国は案外デフレを輸出しない」は2023年後半以降のマクロ予想の精度を問う試験の中で重要な設問だったに違いない。 中国経済の動きが先進諸国に与える影響について何かオーソライズされた見方はないものか。NY Fedの調査部門のエコノミスト達が執筆しているブログ"Liberty Street Economics"が中国経済の予想外の回復とクラッシュが2年程度のスパンで米国

    米国経済に中国が与え得る影響の論文 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
    kaorun
    kaorun 2024/04/06
    不動産から製造業へ軸足を移しながら、一方で政治的な孤立政策や排外的な訪中外国人への圧力をかけデカップリングに輪をかけて全力でブレーキを踏んでいるように見えるんだよね...
  • 全人代で幻に終わる中国の財政拡張期待 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    中国経済については昨年厳しめの記事を連発してから力尽きていたが、この間に一度財政拡張の期待というものが盛り上がっていた。2023年10月24日に中国の全人代(国会みたいなもの)常務委員会は財政赤字の拡大を可決した。前回の記事では「確かに理論的には春の全人代会期以外でも2ヶ月に一回開かれる全人代常務委員会(次回は10/20 -24)で補正予算を組むことは可能であるが、ある程度の埋蔵金的な資金を使える可能性はあるものの、財政赤字拡大まで踏み込む可能性は高くない。2023年暮れにあえて財政拡張を行うとすれば、それは2023年の成長目標の5%達成が危うくなった時である。しかし、2023年はゼロコロナ政策からのリオープン効果があるのでさすがに5%成長は余裕である」とスケジュールまで調べてあったにもかかわらず、まさか当に財政赤字が年末に引き上げられるとは思っていなかった。全人代が開かれる春まで待てず

    全人代で幻に終わる中国の財政拡張期待 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国上場の日本株ETFのアホらしい舞 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    中国で上場する日ETFの乱高下が話題になっている。日経平均指数は年末から年初にかけて連日上昇してきたが、その指数を追い越す形で中国上場の日ETFが更に高騰し、日経平均指数から離れて勝手に乱高下を繰り返した。年初来の日経平均指数の上げ幅は6%程度であったが、中国上場の日経平均ETFは度々のストップ高を経て一時年初来22%も上昇した。これではもはや日株のチャートではない。 一般的にETFはファンド価値が原資産指数の値動きに連動するような原資産のバスケットを保有しており、一方で取引所では投資家の売買(需給)に基づいた価格が形成される。原資産の日株はその間上昇はしたものの、極端には上昇していないので、直近の中国上場の日ETFの上げの大半は、ファンドが保有する原資産のフェアバリュー(1口当たり純資産価格、1口当たりNAV)対比の上海市場での需給由来のプレミアム拡大と解釈される。 1口

    中国上場の日本株ETFのアホらしい舞 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • ブラックマンデーと高金利下のリスクプレミアム : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    直近の株式指数の値動きを最も綺麗に説明する切り口の一つが「S&P 500の債券化」であることに異論は既に少ないだろう。S&P 500のフォワードEPSから計算される益回り(フォワードPERの逆数)と10年国債利回りを比較したエクイティ・リスクプレミアム(ERP)はGFC後の全ての領域を下に抜け、GFC前の2000年代の水準と比較しても低くなっている。特に2023年に入ってからはこれが著しく、GFC前の200bpを抜けたと思ったら数ヶ月でわずか25bpまで縮小している。10年後に必ず返って来る安全資産である10年国債と比べてS&P 500で様々なリスクを取っても利回りが25bpしか増えないのである。 ERPの急激な縮小は、2023年に入ってから株式指数が国債をアウトパフォームし続けた、具体的には株式指数が債券ほど値下がりしなかった結果である。2022年はTLTとQQQが似たような値動きになっ

    ブラックマンデーと高金利下のリスクプレミアム : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国は緊縮財政と内需崩壊によるデフレが続く : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    前回の記事では中国の8月の限界的な景気回復が内需ではなく外需回復主導のものであったとの仮説を立てたが、9月のデータはその見方に沿ったものになっている。中国PMIは国家統計局(NBS)版、財新(Caixin)版の二つがあり、それぞれ製造業とサービス業で合わせて4つあるが、9月分はNBS製造業PMIが緩やかに回復、財新製造業PMIが横ばい、NBSサービス業PMIが少し反発、財新サービス業PMIが続落となっている。製造業が極めて緩やかながらも上向き(景況感下げ止まり)になっており、中でも輸出に携わる大企業が多いNBSの方がその傾向が強く、一方でサービス業はリオープン効果をいつぶす形で明瞭な減速が続いている。サービス業主導の回復は存在せず、外需しか戻っていないことがPMIからも分かる。 中国の消費者物価(CPI)もコンセンサスを下回る0%近辺の推移が続く。生産者物価(PPI)はエネルギー価格上

    中国は緊縮財政と内需崩壊によるデフレが続く : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国不動産市場も徐々に極論排除のフェーズに : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    中国の民営不動産業界の苦境が続く中、すっかり懐かしい名前になった恒大(Evergrande)が突如マンハッタンの破産裁判所にチャプター15(連邦倒産法第15章)の適用を申請した。破産には破産清算(Bankruptcy Liquidation)と破産保護(Bankruptcy Protection)があるが、恒大が申請したのは明らかに後者であり、つまりこれは米国内の資産が取り付け騒ぎに遭わないように法廷の保護を求めたということにすぎない。しかし2年ぶりに「恒大が破産」とのヘッドラインが飛び交うことになり、ついでに3,000億ドル(50兆円)にのぼる負債規模も久しぶりに思い出されることになった。恒大の海外債券はもとより債権の中でも請求権が弱く、(一応まだ債権者集会を延々とやっているが)とっくの昔にほぼ全損が見えているので、チャプター15を申請したこと自体による経済的なインパクトはない。 あれか

    中国不動産市場も徐々に極論排除のフェーズに : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • リチャード・クーによる中国経済の解説 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    ブログが様々な視点から見てきたように中国経済はますますデフレーショナリーになっている。そのモヤモヤ感はどうもいわゆる「バランスシート不況」ではないかと思えてきた中、バランスシート不況の大家である野村総合研究所のリチャード・クー氏が中国の東呉証券の招待で香港で講演を行ったのが中国で大きな反響を呼んだ。講演の内容どころか、最終的にはスライドまでインターネットで出回った。それ自体が既にデフレーショナリーである。バランスシート不況と最近流行っている「日化」はほぼ同義である。バランスシート不況とは バランスシート不況はクー氏が数十年にわたって推してきた有名な議論であり、筆者の手持ちの氏の著作、『陰と陽の経済学』からの丸写しで簡単に紹介する。当は『The Holy Grail of Macroeconomics: Lessons from Japan’s Great Recession』の方が有

    リチャード・クーによる中国経済の解説 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国の外貨準備6兆ドル説とそれでも進む人民元安 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    1ドル7元を割り込んでゼロコロナ最中の最安値に近付いた人民元が話題になっているが、以前同じような場面の2015年のチャイナショックや2018年の貿易戦争では注目されていた外貨準備はさっぱり話題にならなくなっている。中国の外貨準備は国家外貨管理局 (State Administration of Foreign Exchange, “SAFE”)が管理しており、かつての固定相場制時代や、2005年に管理フロート制に移行(人民元改革・人民元切上げ)した後の人民元への資金流入を吸収し人民元上昇のペースを緩めようと連日為替介入を行った過程で積み上がったのが3兆ドルの外貨準備である。しかし米国が金融危機から復活すると共に米ドルが再び強含み始め、更に2014年の欧州と日の金融緩和に伴う米ドル独歩高に人民元が無理して付いて行ったため中国の輸出は伸び悩みはじめ、米ドルの低金利時代に積まれた外債返済の米ド

    中国の外貨準備6兆ドル説とそれでも進む人民元安 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国の失業者数を再び推測する : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    中国のパンデミック後の雇用情勢について既に一度ふんわりとは触れたが、ちょうど定量的に試算する論文がSNSで出回ったので取り上げてみたいと思う。著者は「王明遠」氏であり、北京改革発展研究会の研究員である。つまりアカデミックな人間であり、この論文には政治的な意図はない。前回のパンデミック直後には中泰証券のレポートを引用しており、あの時は7,000万人の失業者がいると結論付けていたが、あれからリオープンを経て何か変わったのだろうか。緑色は引用である。 歴史的に穴だらけの失業統計 歴史的に「政府工作報告」ではオフィシャル失業率に都市部登記失業率を用いていたが、2018年以降はこれを調査失業率に置き換えた。登記失業率があまりにも使えないので調査失業率へのシフトは大きな進歩であったが、調査失業率にも欠点がある。例えば2023年4月の全国都市部調査失業率は5.1%でしかなく、パンデミック前の2019年と

    中国の失業者数を再び推測する : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 地方財政の障子を突っつく中国の不動産不況 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    前回の中国の記事は様々なテーマを広く浅く取り上げたが、中でも不動産市場と地方財政についてもう少し詳細に見ていきたい。21世紀に入って以来どんなにゴーストタウンと笑われようと中国不動産バブルは存在しなかったし、不動産バブル崩壊懸念も陰謀論の範疇を出なかった。しかし2021年に始まった民営不動産企業の迫害に加え、ゼロコロナ政策とハイテク企業の迫害が招いた不況はいよいよ不動産市場に影響を及ぼし始めている。 他の多くの経済指標と同じように新築住宅販売件数(左)にもリオープンは存在せず、パンデミック中と変わらないペースにとどまっている。これはパンデミックで新築住宅の供給が限定的だったのと、習近平政権の民営不動産企業引締めで引き渡しまでにデベロッパーが倒産する懸念(カウンターパーティ・リスク)が燻るためであるが、純粋に住宅市場のセンチメントを表現する中古住宅販売件数(右)も、確かにパンデミック中より

    地方財政の障子を突っつく中国の不動産不況 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国リオープンは存在しなかったことを確認 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    パンデミックが明けた中国経済のリオープンは2023年の一大テーマになるとされてきたが、その失速が明らかになってきている。リオープンがインフレを輸出するなどという話もあったが、現実には消費者物価(CPI)は前年比でわずか +0.1%、生産者物価(PPI)は -3.6%と、中国は急速にデフレーションに向かいつつある。パンデミック後の世界の大半でインフレが続いているのとは全く異なる光景である。2020年頃からのブログの読者であれば、パンデミック中に主要経済体の中で中国だけがほとんど給付金を大々的に配らなかった(移転所得がなかった)ため、中国だけは余剰貯蓄が少なく消費と物価が戻らずむしろデフレを輸出すると何度も主張してきたのが記憶が残っているだろう。これはリオープンしたところで変わらない。逆に物価変動、特にインフレがいかに給付金(移転所得)のみによって規定されるかも、先進国と中国との比較で答えが

    中国リオープンは存在しなかったことを確認 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • CS AT1事件の本邦への波及と個人投資家の社債投資 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    前回の記事で見てきたようにUBSによるクレディ・スイス(CS)の救済買収に伴って無価値になったCS AT1債は全世界の投資家に損失をばら撒いたが、当然その一部は日富裕層や法人を直撃している。時間が経つにつれてCS AT1債投資で損失を出した人々の群像が浮かび上がってきた。青山学院大学駅伝部の原監督がやられたのを早々と公表していた。コーエーテクモ・ホールディングスもCS AT1債で41億円ほどの損失を出しており、投資巧者で知られる襟川会長は決算説明会で「売却の指示を出していたにもかかわらず実行が間に合わず全額損失になった」と述べ、取引は「事故」であり、自身の投資経歴の中で「最大の汚点」とまで表現した。それだけスイス当局の暴挙は合理的に予想を当てることが難しく、詳しい人ほど損させられたということである。 金融庁の統計によると日国内で販売されたCS AT1債の総額は1400億円程度であり

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  • グローバル大手機関投資家の2023年マクロ見通し : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    明けましておめでとうございます。新年一発目は偏ったビューを開陳する代わりに、グローバルの機関投資家大手が公表している2023年のアウトルックの取りまとめた。ゴールドマンなどのウォール街のセルサイドのレポートもリンクが出回っているが、そちらより優先度が高くしたのは、バイサイドの方が当たるからということでは全くないが、セルのレポートがどちらかというと投資家にリスクとポジションの点検を促すものであるのに対し、バイは戦略に共感してもらってお金を集めるのを目的としており、個人投資家から見てもバイサイドの方が多少なりとも相性がよいと思われるためである。「じゃお前がそのポジションを張ってみろ」という話になるので極論も排除されている。 ブラックロックの大局観から始めよう。過去40年間の大安定期(Great Moderation)が終わり、今後の新レジームでは先進国は①高齢化に伴う人手不足②地政学的な緊張③

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  • 中国の新型コロナ政策が極端から極端へ : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    中国ではロックダウンに反対するデモに押される形でゼロコロナ政策がなし崩しに撤廃された。前回の記事で「デモによってゼロコロナ政策の継続だけは困難になったに違いない。ゼロコロナ支持の農村出身者を大量に雇って白装束の中に入れて都市住民を管理させていたのだが、さすがに大半の住民が規制に従わなくなったら物理的に行動制限は成り立たない」としていた通りである。もっとも中国のリオープンはブログの想定より遥かに過激であった。12/7に中国国務院の共同防疫メカニズムは「新型コロナウイルス感染拡大防止抑制措置実施の一段の最適化に関する通知(通称・新十条)」を発表し、必須だったPCR検査を任意にし、また「PCR検査陰性証明の提示や健康コードの確認を求めない」としたことでスマホの健康コードも歴史になった。ついに新型コロナの感染症の管理カテゴリーを「乙類」に変更した。これは日でも一年前から議論されているインフルと

    中国の新型コロナ政策が極端から極端へ : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 日銀のYCC修正の住宅ローンへの影響の仕方 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    前回の記事では他の先進国の住宅ローンの変動比率を見て来たが、投資とは別に我々の実生活に最も関連が高い日はどうだろうか。日はリーマンショック前は米国と同様、固定金利住宅ローンが大半を占めていたが、リーマンショックを経てかなり長い期間にわたって低金利政策が続くとの見方が圧倒的になると変動金利住宅ローンのシェアが上がって来た。マイナス金利政策導入後はその傾向が更に加速し、変動金利住宅ローンのシェアはフローベースで7割まで上昇した。海外ではカナダのようにパンデミック後の低金利時代に目先の金利に釣られて変動金利化が進んだケースがあり、それが利上げサイクルに入った今になって裏目に出ている。日銀行も既にYCCを撤廃しており、次は利上げ(マイナス金利政策撤廃)をも警戒する必要が出てきたが、住宅市場には住宅ローン金利急上昇による激震が走るのだろうか。 変動金利の決まり方と短プラ ブログは例のごとく極

    日銀のYCC修正の住宅ローンへの影響の仕方 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 中国の反政府デモとゼロコロナ政策の持続可能性 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    行き詰って来た中国のゼロコロナ政策について、前回の記事ではリオープンの環境が整うための条件を挙げ、「早まりすぎた期待を裏切るネガティブニュース、進捗を確認するポジティブニュースが交錯する」としつつ「楽観・悲観両方の極論を排除していく流れ」としていたが、その直後から政策はまさに極論から極論に振れた。前回の記事のわずか3日後にあたる11/11に中国共産党政権はゼロコロナ政策の、主に実行面の微調整を発表した。通知が20項目からなるため「20条」と呼ばれており、ダイナミックゼロコロナ政策を堅持するとしつつ、「合理化(優化)」という名で調整、つまり部分的な移動制限の緩和を指令している。中身はかなり細かい指導の集合体となっており逆に全体像を掴みづらいが、とにかくメディアは「隔離期間の短縮」と「海外との間の航空機運行の規制緩和」を取り上げて規制緩和と呼んだ。地方政府による必要のない恣意的なロックダウンを

    中国の反政府デモとゼロコロナ政策の持続可能性 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 国によって異なる住宅ローンの固定・変動金利の選好 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    世界中が一斉に金融引締めに差し掛かる中、不動産市場への打撃の懸念が話題になっている。長期金利の上昇に連動する形で住宅ローン金利が上がれば、当然借りる人は減るし、借りられる金額も減って来るので住宅価格はその分ディスカウントになりやすい。住宅価格の調整のペースや調整幅は国によって異なっており、日経新聞などは「利上げで先んじた国や市場が過熱していた国」ほど調整が深刻としており、また家計債務の大きさに注目している。それでは利上げが遅れた国々も遅れて調整がやってくるのか。 ブログは先立って米国の不動産市場について調査していたが、一度消費者が大挙して固定金利で30年以上借りてしまい金利リスク(及び金利上昇後の損失)を世界中の機関投資家に転嫁してしまった後の、不動産市場の引締めの効きづらさにはため息が出るばかりであった。固定金利住宅ローンの金利を引き上げたところで新たにローンを組みづらいだけで既に借り

    国によって異なる住宅ローンの固定・変動金利の選好 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • 24年ぶりの円買い介入とその規模、原資の考察 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    先進各国が金融引締めを加速させる中、黒田日銀が頑なにYCCと金融緩和を止めないことから円安が加速した。その過程でまず山崎・元財務官が為替介入の可能性を警告し、その後9/22夕刻についに24年ぶりの円買い介入が決行された。ほとんどリアルタイムで神田財務官が為替介入の実行を通告した。ドル円レートは一時5円以上下落したが、当日を底に徐々に水準を回復し、10月に入ってから新高値を取っている。結果的に為替介入は一時的に押し目を作っただけという形となるが、これだけの米金利上昇があってもドル円が高値回復に数週間も要したのは為替介入の効果と言えるだろう。 為替介入の正式名称は「外国為替平衡操作」であり、財務省が決定し、日銀が代理人として民間銀行との為替取引を行う。その原資は日の外貨準備の大半を占める財務省の外国為替資金特別会計であり、他にも日銀が過去に受け取った米ドル利子をプールしたものも外貨準備に数え

    24年ぶりの円買い介入とその規模、原資の考察 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • ロシア・ウクライナ紛争は20世紀型の全面戦争に : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    ウクライナ紛争についての前回の記事は大恥をかいた。「引続きキエフをはじめとするウクライナ土は安全である」とした翌朝からキエフが空爆を受けたのである。もし現地に住んでいてそのような判断をしていたら死ぬところであった。ドンバス戦線への介入に続き、プーチンは2/24に「特別軍事作戦」と称してウクライナに全面的な宣戦布告を行った。前回の記事でドンバス紛争介入について「落としどころに到達したわけではない」「(そのままでは)ウクライナの大勝利である」までは分かっていたのに、プーチンが怒りに任せて更に全面戦争を仕掛けて来るとまではまさか思わなかったのである。前回の記事ではロシアの言い分にもそれなりの紙面を割いたのだが、どれを取ってもウクライナが全面的な侵略を受けなければならない理由にはならず、侵略戦争には旗幟を鮮明にして反対していかなければならない。当然ロシアはその後SWIFT締め出し、中銀資産凍結を

    ロシア・ウクライナ紛争は20世紀型の全面戦争に : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍
  • ロシア外貨準備凍結と米ドル流動性問題 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍

    ロシアウクライナ紛争がいよいよロシア軍によるウクライナ全土への侵略戦争に発展するにつれて、米国とEUは歩調を合わせてロシアに大規模な金融制裁を発動した。2/26にEUは米国などと共同声明を発表し、当局が選択したロシア系銀行をSWIFTから排除すると共に、そのインパクトをロシアが緩和するのを阻止するために、ロシア中銀(CBR)の外貨準備を凍結した。 SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)はベルギーに位置する、金融機関の口座間で資金を移動する際のメッセージシステムであり、このネットワークに入っていないと国際貿易などの決済が非常に面倒になるため、制裁としてのSWIFT排除は被制裁国を「世界経済から締め出す」「金融版核兵器」などと形容される。制裁の武器に使われた前例は2012年にイランなどがある。SWI

    ロシア外貨準備凍結と米ドル流動性問題 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍