新型コロナウイルスによるパンデミックは、人々の生活を大きな影響を与えた。しかし筆者は、潜水艦での任務という特殊な状況に置かれ、パンデミックに関することはほとんど何も知らされないまま、一変してしまった世界に放り込まれる。そのとき、彼にこの世界はどう見えたのか──。 2019年、僕はエコール・ポリテクニークに入学した。このフランスの名門工科大学の学生たちは、空軍、陸軍、海軍のどれかひとつで軍事訓練を受ける。 僕は9月に海軍兵学校に派遣され、2ヵ月間の基礎訓練を受けた。その後、エンジニアリングチームの一員となる資格が与えられ、次の配属先を選ぶことができた。僕は原子力潜水艦の乗組員となった。原子力潜水艦は、最大10年間、浮上せずに水中に潜り続けることができる。 僕は本当に海に出たかった。最初こそ緊張したものの、訓練で短期間の任務をいくつかこなしていくうちに慣れてきて、もっと長い任務に就きたいと思う