自転車事故の「天国と地獄の分かれ目」 自転車が交通事故の加害者になった、歩行者が死傷したという事故が起きても、ほとんどは断片的な外形しか報じられていない。 裁判傍聴マニアである私は、自転車事故の刑事裁判を数多く傍聴してきた。そのなかで、「自転車事故はここが天国と地獄の分かれ目だ!」と強く感じることがある。死傷事故が起こってなにが「天国」だ、ではあるのだが。どこがどんな分かれ目か、今回はその話をしよう。
ネットショッピングでの「配達の時間指定」は、積極的に利用したほうがいいのだろうか。物流ジャーナリストの坂田良平さんは「再配達を減らせるので配達現場にとっていいと思われがちだが、配達員のキャパシティをまったく考慮せずに受け付けているため、逆に大きな負担になっている」という――。 配達員の傷口に塩を塗り込むひとこと ECや通販、あるいはメルカリ等の個人間売買のときに、時間指定配達を指定しているあなた。 実は、時間指定配達は、配達員の負担になるケースがあることをご存じだろうか? また中には、指定した時間から遅れた配達員に対し、「午前中指定だったのに、ずいぶんとのんびりだったんですね」などと、配達員に嫌味を言った経験がある人もいるかもしれない。 配達員は、配達に出発する時点で、ほぼ100%、「これは時間指定に間に合わないかもしれない……」と分かっている。 だが仕方ない。 配達すべき荷物が目の前にあ
不吉な死の予言 村に来て何日かたったころだった。降りつもる雪を踏みしめて、イラングアが私の家にやってきた。 グリーンランド最北の村シオラパルクには今、四十人ほどしか住んでいない。二十代の男はわずか数人で、他の連中は隣のカナックや南部の都市にうつってゆき、日本の山村と同じように過疎化が進んでいる。イラングアは、わずか数人しかいない村の若い男連中のひとりだ。 彼が私の家に来るのは、めずらしいことではない。イヌイット社会には伝統的にプラットという、文字通りぷらっと他人の家を訪問してコーヒーを飲んだり、ぺちゃくちゃ喋しゃべったり、賭け事に興じたりする交流、暇つぶしの習慣がある。私は片言の現地語しか話せないし、客人をうまくもてなせるタイプでもないのでプラットにやってくる人は少ないのだが、人づきあいのいい彼は毎日のようにやってくる。そして誰それが猟に出て海豹あざらしを二頭獲ったとか、今日は天気が悪いか
従業員からも必要とされるビジネスモデルを「置きに行く」 当たり前のことですが、経営者は「自分が作りたいと思っているもの」や「やりたいと思っていること」が、お客様だけでなく、従業員からも必要とされているかどうかを、まずは冷静に見極める必要があります。 よく「集客さえできれば、もっと売上が上がるはずだ」とか、「良い人材さえ採用できれば、うちの会社はもっと伸びるはずだ」と言う経営者がいますが、問題の本質は、実はそこではありません。 本当に問題なのは「自分がやりたいこと」と「お客様や従業員に求められていること」がズレてしまっている点です。 結果として、経営者は「お客様が集まらない……」「良い人材が全然集まらない……」といった苦しい戦いをせざるをえなくなってしまうのです。 お客様や従業員から「本当に必要とされるもの」であれば、向こうの方から探してでも、人がやって来るようになります。 では、お客様だけ
海や川で流されてしまった時にはどうしたらいいのか。小学校などでは「大の字背浮き」の姿勢で救助を待つよう教えられることが多いが、日本水難救済会では、背浮きは難しく、特に海では危険だとして「イカ泳ぎ」を推薦している――。 「背浮きはムリ」の動画が一気に拡散 日本水難救済会の公式X(旧Twitter)の投稿が大きな話題を呼んでいる。海や川などで万が一流されたときには、浮いた状態で救助を待つのが基本とされているが、多くの小学校で教えられている「大の字背浮き」では1分も浮いていられない――。そのことを、同会の常務理事で、元海上保安学校長の江口圭三さんが自ら実証実験した動画つきで伝えるものだった。 今回、当会常務理事(元・海上保安大学校水泳教官)が波静か(波高5cm)な海で、「大の字背浮き」を試みましたが、わずかな波が顔を洗い、浮いていることができませんでした。やはり、この手法は海では危険です! pi
被害者たちは、外出先でiPhoneを盗まれ、わずか数分後にはアカウントから閉め出される。次いで自宅のMacはログインができなくなり、24時間以内に数百万円という預金が口座から消える――。そんな事例をウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。 被害のきっかけは、iPhoneの4桁または6桁の簡易的なパスコードを盗み見られたことだ。これによって、より強力なパスワードを設定したはずのApple IDのセキュリティが同時に無力化されてしまった。 同紙が今年2月に「脆弱性」として報じ、さまざまなテックメディアで取り上げられ大きな反響を呼んでいる。Appleは現時点で対策措置を発表していない。 被害はiPhoneからほかのApple製品に広がる… これはiPhoneの6桁のパスコードさえわかれば、Apple IDのアカウントを丸ごと乗っ取れる状態であることを意味する。 Apple IDとは、多く
仕事のパフォーマンスを高めるには、どのくらい睡眠を取るのが適切か。スリープコーチの角谷リョウさんは「日本人に多い『寝ないで頑張ることが美徳』という考え方は危険だ。質より量が仕事の成果に直結した時代は、睡眠時間を削ることに合理性があった。しかし今の時代は集中力や想像力、コミュニケーションが重視される」という――。 ※本稿は、角谷リョウ『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。 睡眠を削ることの意味は時代によって変化する理由 よく「時間は有限だからお金より大切」といいます。さらには、「1日はみんな同じ24時間だから、寝る時間を削って活動時間を増やしたほうが得」という発想に至ります。
終戦直後からIQは上昇している 「日本人はどんどんバカになっている」と感じる人が増えているようですが、これが正しいかどうかは、そもそも「バカ」とはなにか、ということから考えなくてはなりません。 元首相を銃撃するのが愚行であることは間違いありませんが、だからといって容疑者の男が「バカ」だとは言えません。そればかりか、SNSの投稿を読んでも、複数の資格を取得していたことからも、高い知能と能力をもっていたようです。 それにもかかわらず、社会からも性愛からも排除されたことで、テロリズムが自分の存在を正当化する唯一の手段になってしまったのではないか。だとしたら、「バカなこと」をしたのはアイデンティティの問題です。 11月25日(金)発売「プレジデント」(2022年12/16号)の特集「頭がいい思考、バカの思考」では、本稿のほか、「頭がいい人は、なぜ頭がいいのか」をテーマに取り上げています。「東大卒ベ
マインド・コントロールをされた人はどうなるのか マインド・コントロールという問題に私が初めてぶつかったのは、1990年に弁護士になった直後でした。大学時代に家庭教師をしていた女の子が統一教会に引っかかってしまったのです。 あんな素直な子をだますなんて、なぜなんだと思いました。統一教会による霊感商法の被害者の救済を担当した経験から、とんでもない団体だということはわかっていましたが、統一教会信者を脱会させる試みは初めてでした。 これをきっかけに私は、マインド・コントロールについて詳細に調べはじめたのです。幸いなことに彼女は、その後なんとか統一教会を脱会してくれました。 霊感商法の問題をあつかったときには知らなかったことも、次第にわかってきました。ウソをつき、だましたり脅したりして金銭を奪う霊感商法は、明らかな不法行為で、ただの悪です。 ところが、マインド・コントロールされた信者の行為は、性格の
年齢を重ねても健康であるためにはどうすればいいのか。順天堂大学名誉教授の佐藤信紘さんと非常勤講師の佐藤和貴郎さんの共著『順天堂大学の老年医学に学ぶ 人はなぜ老いるのか』(世界文化社)より、筋力低下を防ぐ生活習慣について紹介する――。(第2回) 筋肉は60歳を過ぎると急激に量と質が落ちる 若いときは当たり前に動いていたのに、年をとって筋肉、骨や関節、神経など運動器の病気、痛みや衰えなどが生じると、辛かったり億劫に感じたりして、日常生活で動くことが徐々に少なくなります。運動器というのは、立つ、歩くといった日常的な動きを支える体の仕組み全体のことで、筋肉、骨や関節、神経などの働きが複雑に連動して成り立っています。どれか一つに問題が起きても体はうまく動きません。 動かないでいると、両足のバランスが悪くなり、やがて歩けなくなったり動けなくなったりして、要支援、要介護に進行していきます。そういうケース
吉野家の役員の「生娘をシャブ漬けにする」という発言の本当の問題点はどこなのか。精神科医の松本俊彦氏は「覚醒剤依存症の人の多くは、自己肯定感が低く、孤独に苦しんでいる。『シャブ漬け生娘』という表現は、そうした人たちをより苦しめることになる」という――。 吉野家騒動に潜んでいるもう1つ別種の差別 「田舎から出てきたばかりの生娘をシャブ漬けにする企画」。吉野家の伊東正明・常務取締役企画本部長は、若い女性向けのマーケティング施策についてこう表現し、役員を解任された。不快に思うのは無理もない。なにしろ、その表現には、吉野屋を訪れる客を馬鹿にしているばかりか、人身売買的犯罪を肯定するようなニュアンスが含意されているからだ。 とはいえ、ちょっと気がかりなことがある。 くだんの発言を非難する人のなかには、「シャブ漬け生娘」という表現から「シャブ山シャブ子」(「相棒 Season 17」, テレビ朝日, 2
こじれた人間関係は愛情や努力では変わらない あなたは、人間関係で何か問題が生じたとき「自分の努力が足りないから、うまくいかないのだ」「私が愛情をもって接したら、相手は変わるはず」と思ってはいませんか? あるいは、人間関係の悩みを誰かに相談したら、「相手を変えたければ、まず自分が変わりなさい」と言われたことはありませんか? しかし、こじれた人間関係は、「愛情」や「努力」でどうにかなるものではありません。努力や愛で相手が変わると考えるのは、新たな苦しみを生むだけです。 たとえそれが家族であっても、同じです。 私は福井県の永平寺で僧侶として20年近くを過ごした後、縁あって青森県にある霊場、恐山の院代(住職代理)となり10年以上が経ちました。その間、生きづらさや苦しさを感じているという、たくさんの方々とお会いしてきました。 皆さんのお話を伺う中で、仏教の考え方がさまざまな問題の解決の糸口、生きるた
日本の多くの構造改革は経済の活性化につながらなかった ——2018年に上梓された『日本経済のマーケットデザイン』(日本経済新聞出版社、上原裕美子訳)で、アベノミクスについて書いていますね。過去10年にわたって、日本の経済政策の屋台骨だったアベノミクスをどう評価しますか。 「3本の矢」に照らして見ると、まず、第1の矢である「金融緩和政策」は大成功を収めたと言ってもいいでしょう。政府は積極果敢なデフレ対策を講じ、経済再生の追い風になりました。 第2の矢である「財政刺激策」も適切な指針でした。日本経済は非常に低迷していたからです。ただ、さらなる財政出動も可能だったと思います。その点で、金融緩和政策に対する高評価と比べると、若干控えめな評価になります。日本が巨額の政府債務を抱えているのは確かですが、日本経済の弱さを考えると、まずは経済再生ありきであって、債務残高への懸念は二の次です。 そして、第3
おすすめの「パトロール」だけで終わってしまう “見放題”、“聴き放題”という言葉にひかれて入会してみたものの、サービスを利用したのは初めの数日だけ、そんな経験はないだろうか。 時々アプリは立ち上げてみるのだが、メニューをスクロールするだけで結局、何も観ずに終わってしまう。そのうち、こうしたパトロールのために料金を払っている気すらしてくる。 パトロールから抜け出せないのは、あなたの責任ではない。これらは人間が生来備えている認知的な特質のなせるものであり、誰もがみな経験することである。さらにはサービスを提供するサービサー側も、このことを認識している。そして、あなたが業を煮やして解約してしまう前になんとか利用してもらおうと手を尽くしている。 今回は、このように私たちがその期待とは裏腹に結局コンテンツを楽しめないままに至る理由と、サービサーによる献身的な取り組みについて、そして結局はこうした問題を
これからのキャリア形成では、なにが正解なのか。マーケティング戦略アドバイザーの永井孝尚さんは「『あなたという商品』の価値を高める方法を考えるべき」といいます。永井さんの知人に「残業するヤツが偉い」が口癖のモーレツ社員がいました。現在は50歳。大企業の部長職ですが、社内の待遇には不満ばかり。しかも家庭不和で妻と娘は家から出て行ったといいます。どこで間違ったのか。教訓とあわせてお伝えしましょう――。 「会社員なら社長を目指すのは当然」 今どきのキャリアをどう考えたらいいのか。失敗から学ぶことはたくさんあります。50歳のある「モーレツ社員」の話を紹介しましょう。彼の名前は服部タカシ(仮名)。口癖は「会社員なら社長を目指すのは当然」。そして「残業するヤツが偉い」です。 有名大学を卒業し、日本を代表する大企業B社に入社した彼は、入社式会場にいる1000名以上の同期を眺め、ニヤリと笑みを浮かべてこう思
「冬場に1度温かい家に住むと、脳神経が2歳若くなる」 冬に寒い家に住んでいると、“脳の神経細胞の質”が悪くなるという衝撃的な事実が明らかになった。 慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授らが2016年から毎年調査を積み重ねるなかで、最新解析では「冬場に1度温かい家に住むと、脳神経が2歳若くなる」ことがわかったのだ。 「40代から80代まで150人の脳画像を基に、脳の神経線維の質などを点数化すると、冬季の居間室温が低い家と比べて、5度暖かくなることで脳年齢が10歳若く保てるのです。当然認知症の発症も遅くなるでしょう。寒い家では室温の変化が激しい。それによって血管の拡張収縮が繰り返されて動脈硬化が進行しやすく、脳が早く劣化してしまうと考えられます」(伊香賀教授) ほかにも、寒い家では高血圧症や動脈硬化を発症しやすく、夜間頻尿リスクが高まる。さらに自律神経や睡眠を乱すなどの研究報告がある。 それで
日本の自転車は堂々と歩道を走っている。しかし、それは世界の非常識だ。毎日12kmの通勤に自転車を使ってきた「自転車ツーキニスト」の疋田智さんは「日本の自転車事故比率は先進国の中でも最悪レベルだ。歩道を走る自転車にも問題はあるが、車道を走る自転車を邪魔と思うドライバーにも問題がある」という――。 車窓から見ると「邪魔」で「イライラする」自転車 「なんだか最近、テレビや新聞なんかでさかんに『これからは自転車は車道だ』って言うんだけどさ。邪魔くさいよね、チャリが車道にいると」 とまあ、この数年というもの、こういう話を周囲からよく聞く。なるほど自転車についての認識はともかく「自転車は車道」。ようやくそこまできたか。じつに慶賀。こういう方々、以前なら「自転車は歩道なんじゃん?」が当たり前だった。 だが、ネガティブだ。これを言う人は、大抵の場合ドライバーとしての立場からだ。 私はテレビ局に勤めているの
仕事の効率化、上司とのランチ、勉強に運動……。その疲れの原因は脳にあった! 医師と心理学者が24時間の正しい過ごし方を解説。 「現代人は知らぬ間に自律神経を乱す生活をしている」 「人間をはじめとする生き物には体内時計が備わっています。このリズムに従ってその時間帯にふさわしい行動をとれば、同じことをしても、ほかの時間帯に比べて効率よくできるし、成績もよい。反対にこれに逆らえば効率も悪くミスをしやすくなります」 というのは千葉大学大学院人文科学研究院の一川誠教授だ。地球上の生き物は太陽が昇ったり沈んだりするのに合わせて、自分の体も同じリズムで活動するようになった。これを概日周期という。 「寝ているあいだ、私たちの体は代謝が落ちています。それが起床から徐々に上昇し、夕方頃ピークを迎える。ピークを過ぎると再び落ちて、就寝中に低下する。代謝の盛んな時間帯は人間の精神活動も活発になります」(一川教授)
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