「精神病院は怖いところだと思ってました」看護学生がよく言う言葉です。彼らは実習を通して、怖い・暗い・汚い等といったそれまでの精神科病院のイメージから脱却し、新たな意識をもって精神科病院や精神病者と向き合うようになります。しかし、そもそも「精神病院は怖いところ」だと認識させるきっかけは何なのでしょうか。 それは精神病者という自分とは異質な(と思い込んでいる)者に対する無知であり、精神科病院が不可視化されていることではないかと思いますが、それ以外にもさまざまな理由があると思います。その理由を考えていくうちに、そもそも「病院がない時は精神病者はどのように生活していたの?」という単純な疑問をもつようになりました。そこで、精神科病院ができる前の精神病者の在りようを知ろうと思い、フィールドワークを始めたのです。 兵庫県丹波市に香良病院という単科の精神科病院があります。2009年に個室を揃えた新しい病棟