今から2200年ほど昔、その頃、中国では長らく続いた戦国時代がようやく終わりを告げ、秦が中国全土を統一していた。しかし、その秦もわずか15年間で滅んでしまい、再び覇権をめぐって争いが起こった。天下を争ったのは項羽と劉邦という二大英雄であった。両雄は垓下(がいか)の地で激突し、この戦いで勝利をおさめた劉邦が中国の支配権を確保することになる。劉邦はまもなく国号を漢と定め、長安を都にすることを決めた。これ以後、200年間中国全土を支配する前漢の時代が始まるのである。 劉邦は、今でこそ漢の初代皇帝として有名であるが、若い頃は地方の小役人であり、海の物とも山の物ともわからず、とにかくパッとするような人物ではなかった。しかし見掛けだけは、髭をはやして威風堂々としており、いかにも豪傑そうなので人目を引く存在であった。そういうことから、ある酒宴で劉邦の姿を見た高官の一人が、その男っぷりに目を止めてすっかり