紹介:西﨑 伸子 アフリカゾウが近い将来絶滅したとしても「自分には関係ない」。この本を読んだ後でも、無関心のままでわたしたちはいられるだろうか。 本書は、現職の朝日新聞記者である筆者が、南アフリカ支局の特派員時代にとりくんだアフリカゾウの密猟組織の中枢に迫る取材の記録である。サバンナで圧倒的な存在感を示すアフリカゾウだが、その悠々とした歩き姿や威厳に満ちた行動とは裏腹に、象牙の闇をめぐる本書の内容は総じて重く、暗い。長年獣医師としてケニアの野生動物保護区で密猟の取締りをおこなっている滝田明日香の助言を得た著者は、アフリカゾウの群れを皆殺しにし、莫大な利益を得る「犯罪組織」をケニア人取材助手のレオンとともに追いかける。 核心部分にせまる内容は、アフリカゾウ殺しの生々しい現場、密猟組織の中枢にいる国際手配中の人物へのインタビュー、アルカイダ系のテロ組織への資金の流入、さらに取材中におこった筆者