新井さんお手製のケーキをいただきながら 数学基礎論の話はつづきます。 (ケーキは「ミンスミート」。 干しぶどう、干しいちじく、干しプルーン、 自家製オレンジピールなどをスパイスとお酒と いっしょに1年漬けて熟成させたものだそうです) 新井 数学の危機に話を戻すと、 さっきお話したように、 数学者たちはすごく困ったんです。 それで、2千年さかのぼって、大元のもとから 「これって正しいよね、これって正しいよね」と、 ひとつひとつ洗い直していったら、 機械にもわかるぐらい精密な、 「数学とは何か」っていうことの 学問体系ができていったんですよね。 糸井 物事がややこしくなったときに、 「機械にも分かるぐらいに解きほぐす」っていう発想は あらゆる場面でされますね。 新井 そうかもしれませんね。 糸井 でも、それが逆に命取りになる場合がある。 新井 良い面と悪い面が出ますね。 で、コンピュータの原理
「はじめまして」の座談会。 少しずつ数学の本質に迫ります。 ラッセルのパラドックス 早野 アメリカで大学院まで行かれて、 そこで学んだ数学基礎論がどういうものか、 簡単に説明していただくことはできますか? 新井 数学って、たとえば物理と相性のいい「解析」とか、 いろんな分野にマッチした数学があるんですけど、 そのいろんな数学をたばねる 「全体の数学」を「数学する」ところなんです、 数学基礎論って。 早野 ええ。 新井 数学基礎論がどうして生まれたかというと、 数学が、19世紀のおわりに一度 深刻な危機に陥ったからなんです。 糸井 ほぉ。 新井 数学はギリシャ時代からずっと整備されてきて、 科学の言葉として使われてきました。 近代科学や現代科学は ぜんぶ数学の上に成り立っています。 早野 うん。 新井 それなのに、20世紀にはいってすぐ、 バートランド・ラッセルという人が 明確な形で問題を提
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