3Dプリンターで作られたカプセル型の安楽死マシン「サルコ(Sarco)」。同装置を開発した「死ぬ権利」推進団体エグジット・インターナショナルは、スイスでの実用化に期待している。
その日、私はいつものように始業15分前にロッカールームに駆け込んだ。バタバタしながらレセプショニストの制服に着替えていたら、とっくに身支度を終えているベテランスタッフの飯塚さんに声をかけられた。 「ゆきさん、今日って仕事が終わった後に何か予定ある?」 「いえ、何も無いです。帰ります」 鏡から目を離さないまま素っ気なく答えると、 「よかった。予定がないんだったら、ゆきさんも一緒にお茶しに行かない?遠藤さんの出勤は、今日で最後だから」 思いがけないことを言われて手が止まった。え?遠藤さんて今日で辞めるの? 驚いて振り向いたが、 「詳しいことは後でね」 と言い残して、飯塚さんは先に2階の事務所へ上がってしまった。よく見ると、いつもは私より遅く出勤してくる遠藤さんの姿が見えない。 遠藤さんは車の免許を持っておらず、遠方の自宅から自転車に乗ってくるため、始業10分前に息を切らせて駆け込んでくるのが常
「アメラジアン」という言葉を知っているだろうか?アジア各地に展開する米軍基地の軍人・軍属と現地の女性との間に生まれた子どもやその子孫がそう呼ばれることがある。アメリカとアジアでアメラジアン。日本だけでなく、韓国やフィリピン、ベトナムなど米軍が展開する地域に数多く存在する。 かく言う私もアメラジアンの一人である。私の母は沖縄の祖母と米軍の祖父との間に生まれた。私は「クオーター」で、「アメラジアン」で、私が名乗り始めた「ローレンス」という名は、私が一度も会ったことのないアメリカ人の祖父の名である。 私は長い間、自分と似た出自を持つ他者と出会ったことがなかった。アメラジアンという言葉を使う使わないに関わらず、このような出自の子孫が日本にも少なくないはずだが、そのことをあえて言わない人や自分自身が気づいていない人も多い。そんな中、私が25歳の夏、初めて出会った人が黒島トーマス友基さんだった。 トー
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