食べ物の背景には必ず生産者がいるのに、その姿やこだわりが消費者に十分届いていない。価値あるものを作っても発信する場が少なく、消費者が情報を受け取るのが難しいのが現状だ。とてももったいない。 私が制作に携わっている情報誌「東北食べる通信」は作り手にスポットを当て、生産のストーリーと食材を一緒に届けている。作り手を身近に感じることで愛着が湧き、よりおいしく感じることができる。それは生産者へのリスペクトを育む。 生産現場には消費者を感動させるものが必ずある。取材時は毎回、農村の価値を見つける“探検隊”のような気持ちで臨んでいる。 取材して印象に残っている食材の一つが岩手県の短角牛。煮込みにすると軟らかく、うま味が凝縮されていた。さしの入った肉にはない、赤身肉のおいしさに触れ、深く感動したのを今も覚えている。農村の価値を探り当てた気分だった。 生産者とつながりたいと望む消費者は多い。「食べる通信」