■失敗を教訓に生かすために 牛の脳に無数の穴が開く病気、BSE(牛海綿状脳症)。日本では平成13年に感染牛がみつかり、全頭検査などの対策がとられた。昨年末出版の本書は、日本のBSE問題に関わった政治家、官僚、学者、消費者、米国関係者ら約100人にインタビューし、3年がかりでまとめた大作だ。 「被害が最も大きかった英国では、政府の対応を膨大な報告書にまとめて検証を行っている。日本はどうか。大きなパニックが起こり、経済的被害だけでなく国際問題に発展したにもかかわらず、誰も検証しようとしない。この問題が忘れ去られる前に事実を記録しておく必要があった」 感染牛を見逃す全頭検査は安全対策にならない。しかし、世界中で日本国民だけが「全頭検査こそ牛肉の安全を守る」と信じた。その理由は、検査がBSEを見逃す事実を政府が国民に伝えず、「検査をして安全な牛肉だけを市場に出す」と宣言したことによる。 「意見を聴