1975年岡山県生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。
福島第一原発事故の風評被害はいまも続いている。福島在住ジャーナリストの林智裕さんは「私の祖父はメディアが広めたデマのせいで生きる希望を失い、失意のうちに亡くなった。メディアは『権力の監視役』どころか『第四の権力』となってしまっている」という――。 ※本稿は、林智裕『「やさしさ」の免罪符 暴走する被害者意識と「社会正義」』(徳間書店)の一部を再編集したものです。 メディアがデマを広めている 今やメディアは少なくない人々から、流言を鎮めるどころか「広める側」と認識されている。アカデミズムもイデオロギーに偏向し、機能不全に陥りかけている。 日本学術会議は多くの批判や要望を受けていたにもかかわらず、結局、最後までALPS処理水関連では何一つ発信しなかった。 ファクトチェック団体の日本ファクトチェックセンターは、2023年7月になってようやく処理水関連のフェイクニュースを取り扱い、その後もいくつかの
「失われた30年」は大企業のせい 「失われた30年」のあいだに、消費税の増税、社会保険料の段階的な引き上げ、介護保険料の新たな創設などで、税金と社会保険料の負担が増す一方です。その一方で、企業は景気がよくなっている時期においても賃上げをしませんでした。人件費を圧縮することで利益を生み出してきたのです。 コストカットは日本の“得意技”です。かつてのオイルショックも、そうやって日本は乗り越えました。アメリカや欧州との違いはなにかというと、アメリカや欧州はリストラクチャリングで乗り越えたのです。 リストラクチャリングとは、ただ人を解雇して減らすことではなくて、労働時間を短縮したり、組織改編したり、新しい機械を導入して(今ならITやDXになるでしょうか)、職場の生産性を上げることです。 ぼくは、失われた30年は政治のせいというより、経済界の罪の方が根深いと考えています。そもそも直接、製品開発したり
親切にしてくれた村役場の担当者 インターネット時代の今、田舎暮らしブームでの物件探しを支えるのが「移住サイト」だ。ある自治体では、移住問い合わせの9割近くがある移住サイトを経由してというほどの人気サイトもある。 移住サイトによっては、アクセスすれば、移住したい先の空き家物件が地域ごとにわかるばかりか、民間保有の物件でも、各市町村が窓口になっているため、半ば公共サイトとして認知され、信頼度も高いものもある。 市町村の窓口の多くは観光課や地域振興課なので、電話をかければ、物件を保有する業者への紹介だけでなく、それぞれの地域の暮らしぶりや生活環境などの情報を教えてもらえるのが強みだ。 いずれは農業をと考えていた40代のKさんはある移住サイトから知ったA県のある村に新天地を求めた。 人口1000人弱のその自治体には、移住サイトで物件があることを知り、春、夏、秋と何度か訪れた末に、村役場の担当者らか
短命地域に共通する「脂と塩」という組み合わせ シルクロードの秘境・新疆しんきょうウイグル自治区は中国の西端にあり、ウイグル族、カザフ族、モンゴル族など実にさまざまな民族が暮らしています。ここには1987年から2年にわたって調査に訪れました。 この地区はひじょうに興味深いことに、長寿地域と短命地域がはっきりと分かれているのです。まず長寿者が多いのはトルファン、ホータンといった、ウイグル族がすんでいる地域です。 ウイグルの人々はムスリムで、イスラム教を信じています。逆に短命なのはカザフ族の多いアルタイ地方。こちらはアルタイ山脈の山奥の村です。 アルタイ地方の方から行きましょう。ここではカザフ族が遊牧生活をしています。食事は主に羊の肉です。肉自体はもちろんですが、脂身の部分もそのまま食べたり、料理に使ったりなどして大量に摂取しています。 また羊のミルクや、ミルクから作ったバターやチーズも食べられ
日本人は「エコノミックアニマル」と嫌われていた 【中田】今、トルコにおける東アジア研究のモデルケースをつくろうという、世界征服の計画を立てているんです。 【内田】世界征服……。文化戦略ですか? 【中田】そうなんです。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代は、ほんとうに日本が豊かだったんですが、今にして思うと、そのときに日本が世界によいものを残したのかというと、多分何も残ってないと思うんです。 その頃の日本人は実に精力的に世界中で日本製品を売りさばいていました。しかしその実態はというと、下世話な話になりますが、金を積み女を抱かせて現地の腐敗した政権に食い込んで利権を獲得して暴利を貪っていた。そんな日本人はエコノミックアニマルだ、と言われて批判され、まったく尊敬を得ていなかったんです。 唯一尊敬されたものがマンガとアニメ 【中田】もちろん中には例外的にいい人もいたのでしょうが、しか
朝日在籍最終日の夜、彼が中村史郎社長らにあてたメールには、彼が朝日で抱いてきた問題意識がA4用紙で6枚にわたってつづられていた。「今の朝日新聞という組織には、絶望感ではなく、絶望しかない」と身内を痛烈に批判した内容は週刊文春電子版に全文掲載されて話題になった。 「できれば一緒に仕事を続けたかった」 彼とわたしは、2002年に朝日に入社した同期同士。新卒入社で男性、東京本社所属の政治記者である彼と、社会人採用で女性、地方総局所属のわたしとは、社内で歩んできたキャリアも、見てきた風景もまるで違う。 だが、ともに新聞社、そして新聞業界に対して抱いてきた問題意識に共通するところはたくさんあった。だから、3年前の今ごろ、当時広島総局所属の記者だったわたしが、自分自身の退社について最初に相談したのも実は彼だった。 彼は、一足先の21年7月に朝日を退社したわたしにも渦中の文章を送ってくれていた。彼から直
1月1日に発生した能登半島地震で甚大な被害が出ている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「被災地は、以前から大きな地震が頻発しており、一部の専門家から危険性も指摘されていたが、この地域への対策を重視したようには見えない。誰も責任を取らない形で、なし崩しに『地方が見捨てられる』という状況が生まれつつあるのではないか」という――。 新聞が見出しに掲げた「見えぬ全容」とは 能登半島地震から1週間が経った1月8日の朝日新聞は、1面の見出しに「見えぬ全容」と掲げた。 「全容」とは、何を指すのだろうか。 死者や行方不明者の数だろうか。孤立状態にある人数だろうか。 「全容」という言葉の「全容」が見えないのである。それほどまでに今回の災害は把握が難しい。 どこで、どんな被害が生じているのか。誰が、何に苦しんでいるのか。何が、どれぐらい足りないのか。現地だけではなく、情報の中心地であるはずの東京でも、ほとんどわ
20年ほど前まで、北陸の温泉宿では、下着姿の女性たちが団体客をもてなす「艶会」が行われていた。旅行会社の社員として「艶会」を目の当たりにしたという作家の花房観音さんは「コロナ禍で団体旅行が消滅したため、こうした“大人の娯楽”も壊滅した。一度失われたものは、もう二度と戻らないだろう」という——。 2000年代初めに配られていた衝撃的なパンフレット 「今宵、貴方を熱く、激しく完全燃焼させる!」 「お客様の行事で大興奮の女ずもう!」 「美女に囲まれて、極楽、極楽! うっとり幸福色の夢心地じゃ」 「美女プロレス! お色気遊戯ゲーム! もちつき艶会! 湯女の背流し! 遊々アラビアンナイトショー!」 「◯◯(旅館名)ギャルは、ダンスだけでは満足できません!」 「これぞ、芸術 男性天国の決定版!」 私の手元には、上記のような文言が並んだ「ザ・男の艶会」というパンフレットがある。北陸のある温泉地の旅館が、
通説では、徳川家康は大坂冬の陣・夏の陣で豊臣家を滅ぼそうとしたとされる。名城大学非常勤講師の長屋隆幸さんは「それは違う。家康は幾度も和睦を持ち掛け、秀頼を助命することまで考えていた。明らかに豊臣家を滅ぼすつもりはなかった」という――。 ※本稿は、渡邊大門・編『徳川家康合戦録 戦下手か戦巧者か』(星海社新書)の一部を再編集したものです。 大坂冬の陣で徳川家康が考えていたこと 慶長19年(1614)11月末、家康は諸大名に大坂城を囲ませると共に、自分は茶臼山に陣を置いた。秀忠も岡山に陣を布いた(図表1)。 家康は、力攻めを行っては被害が大きいと考え、これを諸大名に禁じた。その上で、塹壕ざんごうや土塁を築き防備を固めつつ前進しやすい状況を作ると共に、築山を築きその上に大砲を配備して大坂城内へ打ち込ませる用意を進めた。 しかし力攻めを完全に制止することはできず、12月4日には家康の命令に背いて加賀
人生やビジネスにおいてきわめて重要にもかかわらず、残念ながら学校の授業では教えてくれないこと。それは「争いごととは何か」「争いごとでの勝ち方とは何か」の2つです。このテーマにおける古典といえば、クラウゼヴィッツ『戦争論』と中国古典『孫子』。作家の守屋淳さんが、この2つの決定的な違いを解説します――。 ※以下は守屋淳「もうひとつの戦略教科書『戦争論』」(中公新書ラクレ)からの抜粋(一部改変)です。 「本質」と「基本要素」の違い ヨーロッパを代表する軍事の著作が『戦争論』だとするならば、東アジアを代表する兵法書が『孫子』に他なりません。実際、現代の軍事思想家であるマーチン・クレフェルトが、次のような指摘をしています。 <孫子が歴史上もっとも偉大な戦争思想家であり、おそらく孫子を除けばクラウゼヴィッツが依然として西側世界の知的伝統においてもっとも偉大な戦争理論家である>(『クラウゼヴィッツと「戦
安倍元首相は、父・晋太郎氏の後を継ぐ形で浄土宗と浄土宗信徒の国会議員でつくる親睦団体「浄光会」の世話人を務める一方、旧統一教会とも一定の関係を持っていた。600万人の信徒がいる浄土宗ではなく、なぜ、規模の小さな宗教の票田を狙ったのか。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんが宗教と政治の関係を解き明かす――。 安倍氏の「起こるべくして起きた」事件の構造とは 安倍晋三元首相の狙撃暗殺事件は、国内外に衝撃をもたらした。密葬であったにもかかわらず、葬儀会場の増上寺には数千人が押し寄せ、多くの国民が別れを惜しんだ。事件から半月が経過し、山上徹也容疑者の供述などによって、安倍氏や国会議員と世界平和統一家庭連合(本稿では、旧称の「統一教会」とする)との関係が少しずつみえてきた。 ここでは、本事件を端緒として、安倍氏の信仰や「起こるべくして起きた」事件の構造、権力と宗教の在り方を論じていきたい。 安倍氏が亡く
「池田名誉会長がお亡くなりになってるわけがないでしょう。もしお亡くなりになったら、われわれが即、公式発表します。われわれが最も恐れているのは、その情報が外部のマスコミにスクープされてしまうことです。そんなことになったら、創価学会の権威なんて何もなくなってしまう」 つまり、いま日本社会で人が亡くなると、医師が医学的見地からの死亡診断書を作成なくてはならない。近親者などは、その人の死を知ってから7日以内に死亡診断書を役所へ届け出る義務があり、また死亡診断書に虚偽の内容を記載することは違法行為だ。かつ、突然死や指定感染症による死、犯罪行為の結果の死と疑われる場合などは、警察の検視を経る必要さえある。日本の法制度下で「人の死を隠す」ことは(特に著名人の場合)不可能に近く、また創価学会がそういう画策をしていたと知れたら、それ自体が猛バッシングされるだろう。
愛知県小牧市内、当時30代後半の日本人女性を無免許運転の上でひき逃げして逃走し重傷を負わせたボドイ(技能実習先から逃亡したベトナム人)の自宅を訪ね、同居人たちからの聞き込み後に記念撮影をした筆者。 「在日中国人」は成熟しすぎた ――安田さんといえば、大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞した『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)や『性と欲望の中国』(文藝春秋)など、中国ライターの印象が強いですが、最近は在日ベトナム人をよく取材されていますね。 【安田峰俊】もともと2014年あたりから在日ベトナム人には目配りしていましたが、大きな要因はやはりコロナです。2017年に習近平第二期政権が成立してから、中国本土で政治的な社会問題に触れる取材をすることがいっそう難しくなりました。ただ、中国本土に行かずとも、香港なり台湾なり、もしくはアフリカなど海外の華人社会をウロウロしていれば全
「日本経済再興」にはなにが必要なのか プレジデントオンライン編集部では、9月26日に経済同友会・代表幹事の新浪剛史さんと経済学者・成田悠輔さんの公開対談を実施します。テーマは「日本経済再興」です。これはPRESIDENT創刊60周年記念フォーラム「未来創造フェスティバル」のプログラムのひとつで、参加費は無料です。 この記事では、特別対談の企画の経緯をお伝えします。ひとつのきっかけは、2022年10月、成田悠輔さんが、やはり経済同友会の代表幹事(当時)だった櫻田謙悟さんとビジネス映像メディア「PIVOT」で行った「日本再興ラストチャンス」という対談動画です。 櫻田さんは、経済同友会を通じて、日本再興に向けてさまざまな提言をされています。その前提は「今を逃すとものすごい勢いで衰退していくのでは」という強い危機感だといいます。やるべきことはもう何度も議論されてきたが、変わるのが嫌で実行できていな
東芝を債務超過に突き落とした簿外債務 東芝が迷走している。2月14日の2016年度第三四半期の決算発表は当日急きょ延期、見通しだけを発表した。 発表された見通しを見ると、4999億円の最終赤字に1912億円の債務超過。まさに末期的ともいえる状況だ。その最大の元凶が「ウエスチングハウス(WH)」の米国の原発建設などに関連した簿外債務だ。その額6253億円(全体では7125億円)、東芝にとっての火薬庫といってもいい存在だ。 すでに報道ベースではWHを連邦倒産法第11章(チャプター11)の申請も検討されているといわれているが、さらに3000億円の追加損失が発生する可能性もあり、関係者の間からは「それができるくらいならだれも苦労はしない」(主要取引銀行関係者)という声が上がっている。 事実東芝はこのほかにWHの債務保証などをし、7934億円(2015年度の決算資料から)の偶発債務を抱えている。整理
一昔前には考えられなかった「紅白」への声優出場 今、声優を目指している若い女性にとって憧れている存在とは、単純な「声優」というより、「アイドル声優」なのかもしれません。 近年だと水樹奈々さんや、アニメ「ラブライブ!」出演者の声優ユニット「μ's(ミューズ)」の活躍により、声優が歌って踊るアイドル活動をすることが当然として見られるようになりました。「紅白歌合戦」に声優が出場するという状況は、一昔前からはとても考えられませんでした。 そのため、「バリバリのアイドルになれる自信はないけれど、声は悪くないし、あくまで声優として、歌って踊る存在にならなれるかも」と考える人が沢山いると思います。専門学校などでも、そうしたアイドル的なニュアンスを押し出して、生徒集めをしているところが少なからず見られます。 あくまで個人的に言えば、そうした憧れを持つことは大歓迎です。僕自身、声優という立場ながら、両国国技
日本の少子化は人災か ご存じのように現在、日本は深刻な少子化問題を抱えている。 出生率は先進国では最悪のレベルであり、世界最悪のスピードで高齢化社会を迎えつつある。 この少子化については、「日本人のライフスタイルが変わったから」と考えている人も多い。確かに、ライフスタイルの変化によって晩婚化、非婚化が進んだという面もある。 しかし、晩婚化、非婚化は、女子教育の進んだ先進国ではどこにでも見られる現象である。日本が先進国の中で最も少子化が進んでいる理由にはならない。 よく知られているが日本が他の先進国と比して著しく少子化が進んだのは、「政治の無策」という面も大きいのである。 日本では半世紀近く前から、「このままでは少子高齢化社会になる」ということがわかっていながら、有効な対策を講じてこなかった。 子育て世代にダメージのある政策ばかり講じた 半世紀前、日本よりもはるかに深刻な少子化に陥っていたヨ
日本人の低い生産性の元凶、短時間睡眠とその礼賛 日中に仕事や勉強をしたり、運動をした後は、誰しも休息と睡眠が必要です。しかし、効率化と競争のプレッシャーに晒され続けている我々は、それらを軽視しがちです。私は、日本の失われた30年の元凶は「昭和の高度成長時代の働き方ノスタルジー」にあると思っています。 高度成長期は、少しでも長く働いたほうが個人も会社の業績もあがりました。そして新卒大学生を大量一括採用し、長時間残業で働かせ、「男性主体、女性はサポート」と男女の役割を明確に分け、体力勝負の男性中心の組織と昇進システムを作り上げました。 高度経済成長期の「出世するサラリーマン」 バブル期やITバブル期などの高度成長企業の職場を経験した私には、その時の様子がありありとイメージできます。日本経済や業界がうねりと熱量を持って急成長している時は、少しでも長い時間働けば、個人にも組織にも必ず結果が付いてき
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