トマスはぎょっとして目を見開いた。かろうじてその場に留まったが、緊張のためか、わずかに肩はあがっていた。そうした一連の自分の反応が目の前の白装束をきた聖職者への嫌悪感に基づくものと悟り、あからさまに赤面した。シャルルは先ほどから何も変わらないというのに、ただその言葉を聞いただけで態度を変えた自分を彼は恥じた。対して、神官シャルルは穏やかな声でつづけた。 「クレメンズさん、何かを明かすというのはこういうものです。知ればどうにかなるということではありません。むろん、互いの理解のためには壁を乗り越えて打ち明けていかなければならないのかもしれません。けれどそれは容易なことではないのです。黙っていれば、その身が守られるということもある。関係が壊れないということも。個々人の問題だけでなく、さきほどあなたがおっしゃったようなすべてと呼んでも差し支えないような広い範囲にまたがる差別構造、または支配構造があ