目下、米ドルの強さを最も痛感しているのが日本やユーロ圏だ。だがなぜこれほど米ドルは強いのか? 米経済学者のタイラー・コーエンが大局観を提示する。 アメリカの物価インフレ率9.1%、そして猛烈に強いドル──このひと組の統計は1年前には予想もつかなかったし、いまでも奇妙に思える。 だが、よくよく吟味すれば、こうした数字はアメリカがなおリーダーと目される世界を反映している。経済成長の面でも、さまざまな危機に機敏に対処する能力の面でもだ。 多くの国々が高インフレの渦中にあるが、市場はアメリカが最も気合いを入れてこの問題を解決する、それもわりとすぐに解決すると見ている。 アメリカの有権者はインフレを憎み、連邦準備制度は緩和策をとり、アメリカの政治体制はインフレを抑え込むために、1970年代後半と同じく、景気後退さえ甘受する覚悟だ。 アメリカだけがインフレ率をかなり下げることに成功するわけではないだろ