昔々、中学生の頃、家人に隠れてこっそり夜中に観たモノクロームのメロドラマ。クロチルドというそのフランス娘に、僕は確かに性的な憧れを抱いたに違いない。フランス映画「ヘッドライト」の断片的な記憶の中で、フランソワーズ・アルヌール(1931〜)演じるクロチルドだけが艶めかしく息づいている。 そんな初恋のおんなとの再会を果たした「フレンチ・カンカン」は、パリの名物「ムーラン・ルージュ」の誕生を描いたジャン・ルノワールの傑作オペレッタ。「ヘッドライト」以前のフランソワーズ・アルヌールがフレンチ・カンカンの踊り子ニニを可憐に演じている。彼女は健気にもほとんどスタントなしで踊りのシーンをこなしたという。その喜び、自信が実に素直に現れていて、ラストのフレンチ・カンカンのシーンは感動的だ!