1年間にわたる自身の闘病生活を描いた武田一義さん(38)=写真=のデビュー作『さよならタマちゃん』(講談社)が静かな反響を呼んでいる。治療に正面から向き合ったマンガ家の自画像を通して、温かな人間ドラマや夫婦愛も見えてくる。 「まさかと思った。母をがんで亡くしていたが、自分にとってがんはどこか別の世界のことだと感じていた」。2010年、34歳で精巣腫瘍が見付かったときの驚きを武田さんはそう振り返る。人気SFマンガ『GANTZ』の作者・奥浩哉さんのアシスタントをしていたが休職し、同年6月から約4か月間、入院した。マンガは入院生活を中心に退院後の経過観察、本作の連載が決まるまでが描かれている。 特徴的なのは、シリアスな「闘病もの」とは違うところ。同室の患者や武田さんの妻「早苗さん」とのやりとりはクスリと笑ってしまう内容が多い。例えば、同室の患者の元奥さんと現在の恋人が見舞いで鉢合わせしないかみん