津波は地震の直後に来たわけではない。にもかかわらず、多くの人が犠牲になった。いったい、どんな情報があれば救われたのか。地震学者の石田瑞穂さんは「津波と情報」に焦点をあわせ、被災地で聞き取り調査を進めている。 三陸の調査に同行して感じたのは「地震で停電してしまえばテレビの警報は役に立たない」という当たり前の事実だ。「大津波がくることは防災無線で知った」。そんな声を何人もの人から聞いた。 だからこそ、街全体が津波にのみ込まれる中、防災無線で避難を呼びかけ続けた24歳の遠藤未希さんは、宮城県南三陸町の命綱だった。まさに命をかけ、かけがえのない情報を地域の人々に発信し続けたことになる。 「それに引き換え」と言わざるをえない。政府が運用する緊急時迅速放射能影響予測システム「SPEEDI」の情報発信のことである。 SPEEDIは79年の米スリーマイルアイランド原発事故をきっかけに開発された。原発などで