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ブックマーク / lp.p.pia.jp (24)

  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第25回)医者にオカルトを止められた男

    先日、筋肉少女帯のイベントを渋谷で行った。 メンバーが全員集合。でもバンドとしての演奏はせず、各々がソロまたはデュオで曲を聴かせるという形式だった。僕はこういう時に妙なヒネクレ根性が出てしまう。筋少の曲を数曲にとどめ、特撮やオケミスなどほかで参加してるバンドの曲を多めに歌った。 『そこは筋少の曲をやるべきだよなぁ』 若干思ったが、筋少ベースの内田君が登場するや西城秀樹「傷だらけのローラ」を朗々と歌い出したので『俺なんてまだまだだな』と妙な反省をしたものである。 ちなみに「ローラ」をフランス語で歌っていた。俺、まだまだだ。 全員揃ってその場面では5月に発売となる筋少最新曲「医者にオカルトを止められた男」の宇宙最速試聴会を行った。 会場に新曲を流してお客さんと一緒にみんなで聴くのである。もしかしたら中には「買うまで新曲は聞きたくなかった!」という方もいたかもしれないのだが、そこは『新曲ハラスメ

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第25回)医者にオカルトを止められた男
    u-li
    u-li 2024/04/24
    “これは曲が悪いのではなくて、曲の世界とのアクセスポイントを発見できないこちらの側の責任なのだと思う。” 後半の町子パート、おもしろい……!
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第24回)その時僕は前衛だった

    たまに天才と共演することがある。もちろん死にもの狂いの努力もされているだろうけれど、持って生まれたとしか言いようのない異能の持ち主というのは確かにいて、やっぱり天才なわけである。 先日、吉祥寺で共演したピアニストのエディーこと我がバンド・特撮の三柴理や、浅草でツーマンライブを行ったシンガーソングライターの大森靖子さんのふたりなどは、紛れもなく音楽の天才なわけである。 吉祥寺も浅草も彼らが僕より先の出順であった。その天才の演奏の後に登場して弾き語りをするというのは結構ハラハラするものだ。 でもそんな時にはあるふたつの心構えを持ってすればなんとかなると思っている。 ひとつは、シレッとしていることである。 『すごい人の後に出てきちゃいましたけど何か?』──まるで気にしていないですよーという表情でシレッと出ていくと、お客さんも「おや、彼はシレッとしているな。そういうものかな、じゃ、ま、それでいいか

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第24回)その時僕は前衛だった
    u-li
    u-li 2024/04/10
    “シレッとは重要なんである。 もうひとつは『自分も何かの異能の所持者なのだ』と強く自覚すること”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第23回)彼女の登場

    推しの子分〜転生したら氣志團だった件〜」とタイトルのついた氣志團のツアーファイナルを観てきた。 驚いた。氣志團のファンが事故で死んで、生まれ変わって氣志團のメンバーのひとりとなってライブに参加する、という、音楽劇仕立てのコンサート演出になっていたからだ。 「え!? へ〜、こういうことをしているんだ」と思わず観ながら声が出てしまった。 氣志團と筋肉少女帯とはフェス・氣志團万博などで数回一緒にやっているし、彼らのツーマンライブも、神聖かまってちゃんとゴールデンボンバーとの時に観に行っている。けれどフェスでは彼らを観る余裕がなかったし、かまってちゃんとの時は、持ち時間終了になってもパソコン抱えて舞台を去らないの子君が、伐採された木のようにスタッフに横抱きにされて連れ戻された光景があまりにインパクトあり過ぎて、申し訳ないが氣志團ライブを覚えていない。 その後に行われたゴールデンボンバーとの時のは

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第23回)彼女の登場
    u-li
    u-li 2024/03/27
    全くもってANNと変わらない。よい。“次はダイアモンド☆ユカイさん!」 「ロックンロール!日本を印度に〜!! ……あ、オレこの後知らねぇや」 本当に言いそう。ごめんなさいユカイさん”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第22回)長い長いツアー

    連載が好評ということで、『ぴあ』さんにトークイベントを開催させてもらった。 「のほほん学校」と題して3月1日に渋谷のduoで行われた。 ゲストは漫画家のみうらじゅんさんとPOLYSICSのハヤシヒロユキさん。みうらさんとハヤシ君だもの、それはもちろんゲラゲラ爆笑大会になったに決まっている。 みうらさんは安齋肇さんと一緒に鳴門のうず潮を見に行った時、観光船に乗り合わせた修学旅行生の一団に「ビートルズさんですよね?」と言って囲まれたという話を聞かせてくれた。長髪髭の両氏を後期ビートルズさんの一体誰と間違えたものかは不明だが、みうら&安齋両氏は「若者の夢を壊してはいけない」ので、「イエス」と答え、サインにまで応じた。そして引率の先生が「ちょっとビートルズさん忙しいからみんなもう散ってぇ」と命じるまでビートルズさんに成り切ったのだそうだ。 ハヤシ君はトレードマークの黒ブチ眼鏡が実はダテであること

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第22回)長い長いツアー
    u-li
    u-li 2024/03/13
    “それから5年してハヤシ君のほうから「ベラちゃん」という名前が出たのだ。 5年というのは長いのか短いのか、昔のことなのか今のことなのか、わからないけれど、“ベラの置き所”が心の内に見つかってよかった”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第21回)スティングは僕に毛布をかけない

    眠りに就く時いつも音楽を聴いている。 スマホを枕元に置いて、SpotifyかAppleMusicを微音で流しているのだ。その音色が眠りへの誘い水となっている。 聴くのはいつも70年代のソフトロック&ポップスだ。キャロル・キングとかブレッドとかザ・バンドとか。 70年代のそれらは土と風の香りがして、逆に都会の匂いもして聴いていると心地よく気持ちが落ち着いてくるのだ。寝しなの音楽に何が良いかいろいろ試してみた結果、70年代ソフトロックが今の僕には一番合っているようだ。 普段はメタルやパンクをやっていて、て言うか、そもそもナゴムレコードの出身だというのに、落ち着いた先がそこだったとはなんだが「ケラさんごめん!」という気分になるけれどよく眠れるのだから仕方がない。 CSN&Yの「アワーハウス」やイーグルスの「デスペラード」なんてトロトロと溶けていくように寝心地がいい。 死ね死ね団にもばちかぶりにも

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第21回)スティングは僕に毛布をかけない
    u-li
    u-li 2024/02/14
    “もし長い長い年月が経ってもし仮にみなさんに何かあろうという時に、もしその時にあなたが仮におひとりであったとしても、その時に僕の歌があなたの心に流れることがあったなら、”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第18回)百年の孤独

    ここ数年、年末はCSの「緊急検証!シリーズ」という番組で「紅白オカルト合戦」の審査委員長を務めさせてもらっていた。 オカルトの識者たちが紅組白組に分かれ不思議トークをプレゼン、勝敗を競い合う催しの審査委員長である。バンドの知り合いには紅白歌合戦に出ているミュージシャンもいるというのに何をやっているんだね君は? との感もあるが毎年楽しかった。 ところが2023年は開催されないことになった。残念なので、代わりに新宿ロフトプラスワンでオカルトトークイベントを開催することにした。 「緊急!オーケンのほほん学校!真昼のオカルト紅白年末合戦」 ゲストに怪奇ユニット・都市ボーイズとオカルト編集者の角由紀子さんをお招きした。どちらもYouTube番組を持っていて大人気である。 角さんの番組「ヤバイ帝国」には様々なゲストが登場して毎回面白い。 最近の回には、医者に余命1年宣告されたがん患者が登場した。それを

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第18回)百年の孤独
    u-li
    u-li 2024/01/03
    “アメリ」を女性受けするおしゃれ映画だなんて夢にも思わず、てっきり女ストーカーのサイコ・スリラーだと思って買ったのだそうだ。そもそも他に叶井さんの扱っている映画が「人肉饅頭」とか「キラーコンドーム」”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第17回)できるまでずっと

    40代から弾き語りを始めて最近はさまざまなミュージシャンとツーマンライブをやっている。先日は茂原でROLLYさんと共演した。 茂原駅にはロッテリアしかべるところがなかった。でもそのロッテリアではなんとラーメンを出していたのだ。嘘じゃない! 当だって。僕はそのラーメンべた。何味だったっけかな? きっと今後、全国のロッテリアでラーメンをメニューに入れる計画があるのだろう。それで実験的に茂原でまずはこっそり出していたのではないか……。 そう思いひとり納得した。ライブのMCでそのことを話したら誰も信じてくれなかった「嘘じゃない! 当だって」お客さんからは「えー??」と言う反応しか返ってこなかった。 「大槻さん、それはロッテリアとラーメン屋さんがふたつ並んだフードコートだったのじゃないですか?」と後でエゴサしたらそういったことを書いているポストがあった。 「うーん、あ、そうかも。そうだね、

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第17回)できるまでずっと
    u-li
    u-li 2023/12/20
    “今年はミュージシャンがたくさん天国へ召された。僕はまだ生きている。生きていて、そう、今日もライブだ” あっ泣きそう
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第16回)ツアーファイナル~流れつけ町子の街から

    筋肉少女帯のツアーがファイナルを迎えた。会場はZepp DiverCity(TOKYO)。 ファイナルライブといっても、開演前の楽屋の様子は静かなものである。仲が悪いわけではないのだ。もうメンバーもいい大人だし、長年一緒にいるので、特別に交わす会話もないのだ。 それこそギターの城くんとはツアー中ステージ上でしかおしゃべりしていないし、もうひとりのギターの橘高くんはライブ準備の関係でたいがい楽屋が違う。ベースの内田くんとは……そういえばキングシーサーの話をちょっとしたかもしれない。 キングシーサーとは映画「ゴジラ対メカゴジラ」に出てくる怪獣だ。 「内田くん、キングシーサーって目覚めるまでが無駄に長いよね」 「ん? あー、そうだよね」 とそんなやりとりをしてある地方ではステージへ向かった。ほとんど熟年の芸人同士のようなものである。 スタッフも長い人とは当に長い。メイクのAさんなどとは数10

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第16回)ツアーファイナル~流れつけ町子の街から
    u-li
    u-li 2023/12/06
    “私たち町子の群れはあんた自身でもあるの。でもあんた自体がこの世界からいなくなると、創造主を失った私たちもパッと全員消えてなくなってしまうの”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第15回)紫の炎

    筋肉少女帯のツアー中だ。初日はクラブチッタ川崎で行われた。 その数日前であったか、ミュージシャンの某さんがご自身のライブ冒頭で「今日は歌いたくない。おしゃべりがしたい」と言うような発言をして物議を醸すと言う騒動があった。 『……それオレの格好のMCネタだよなぁ』と正直思ったのだ。でも、某さんに悪いし、そんな日もあるのだろうし、ツアー初日からそういうネタを放り込むのもどうなんだよくないぞ、やめておこうオレよ「よせよ」と「ネバーエンディングストーリー」の日語カバーにおける羽賀研二さんの歌い出しの言葉で自分を抑え、僕はステージに立った。 でも、どうにも1曲目の「サンフランシスコ」の曲中に口がムズムズしてたまらないのだ。言いたい。言いたい。 どうしても言いたくなって1曲目終わるやいなや「今日はしゃべりたくないよー!!」と開口一番大絶叫してしまった。 そこはやはり場外ザワザワッとなった。某さんには

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第15回)紫の炎
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    u-li 2023/11/23
    “ほぼ同期のロックバンドのボーカリストの、違う次元に旅立つその直前に見た光景が、己の表現を熱く求めるリスナーたちの姿であったなどとは。それを思うとぎゅっと胸を押さえつけられたような苦しい気持ちになる
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第14回)ほな、どないせぇゆうね

    筋肉少女帯のツアー中である。 11月22日のZepp DiverCityがファイナルになる。筋肉少女帯はラウドロックバンドだ。60歳も近くなってのラウドロックのライブは体力も気力も死に物狂いである。全身全霊で、全集中して対峙しなければできるものではない。真面目なことを言うが、これは紛れもなく真実である。すべての雑念を捨て、煩悩を振り払い、ただステージとお客様と自分たちの音楽のみに専念しなければ、目指す高みにはたどり着くことが叶わないのだ。 ……で、先日、メイドカフェに行ってきた。 「雑念全然捨てとらんやないか」「煩悩しかないやろうお前」と言われたなら返す言葉もないが、行きたかったんである。ここ数年、一回行ってみたいと密かに思っていたのだ。 正確にはメイドカフェではなくてコンセプトカフェと言うのだそうだ。お店ごとに例えば「妖精さんがお店にいっぱい」とか「アイドル候補生がお給仕します」などとの

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第14回)ほな、どないせぇゆうね
    u-li
    u-li 2023/11/08
    生々しくて草 リスト機能使おうよ “コンカフェのTwitter (フォローがばれるのでフォローはしていない。毎度検索している)でジャン鶴嬢退店の情報を知った”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第13回)しゅとうっとがると〜白昼夢

    江戸川乱歩に「白昼夢」と言う掌編小説がある。晩春の日にふと街へ出た主人公が、夢ともうつつともわからない奇妙な風景を見る。と言う幻想談だ。先日、秋の弾き語りの旅先で僕が見た風景も、夢ともうつつとも知れぬものであった。だからこれは乱歩の「白昼夢」のような、一種の幻想談と思って読んでもらえたらと思う。 弾き語りは柏や横浜へ出かけた。前者はMIMIZUQというバンドのイベントで。出かけて見れば柏は案外に遠い。リハーサルの終わった後に疲れて僕は2階の客席のソファーで少し眠ってしまった。眠ったといっても半覚醒状態のウトウトで、ステージ上の演奏はよく聞こえた。ファンタジックなMIMIZUQの音楽を浅い眠りの中で夢見心地で聞いた。白昼夢の中にいるかのようだった。 横浜はウッディーな作りの店でひとりで弾き語った。柏も横浜もコロナ禍を越えて今や人で溢れかえっている。街の一角にはピアノが出されていた。そこで見事

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第13回)しゅとうっとがると〜白昼夢
    u-li
    u-li 2023/10/25
    “それから何十年も経つ中で、僕は原発不明癌の存在を知り「もう遊んでいる暇がない」の言葉の意味を「もう残された時間が私にはない」と解釈するべきだったのかもしれないと気がついた。反省した。とても。”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第12回)鬱フェス新宿の子犬

    先日、クラブチッタ川崎で行われた「フェス2023」に参加した。神聖かまってちゃん、上坂すみれさん、ベッド・インその他多数のアーティストと共演した。 「フェス」は、バンド・アーバンギャルドが主催している音楽フェスティバルだ。「病気のみなさんこんにちは」というキャッチコピー。さわやかな夏の野外フェスには向かないような、サブカル色が濃いというか、マニアックでコケティッシュなメンツを集めて開催されている。今年で10回目となる。 僕は10回皆勤賞で出演している。3年前の回では新しい学校のリーダーズとコラボして歌った。その時はまさか彼女らがその後世界的にブレイクするとは夢にも思わなかった。素晴らしいことである。 今年は僕があと数年で還暦を迎えるということで、赤いちゃんちゃんこを着せられて「老後じゃないもん MAXX TOSHIYORI」というアーバンギャルドとのセッションで出演することになった。マ

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第12回)鬱フェス新宿の子犬
    u-li
    u-li 2023/10/11
    “鏡を見るとそこには、亡くなった我が父・茂雄の還暦の時そのものの姿が映っていた。歳を重ねるごとに僕は、あまり仲良くなれなかった父親に容姿が似てくる”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第11回)ナマさんと鉄砲

    母の入っている老人ホームで縁日をやるというので行ってきた。たまにそういったイベント事を催しているらしい。行ってみると施設のロビーに屋台が出て、ハッピ姿の職員さんが焼きそばを作っていたり、ボール掬いや射的に老人たちが興じていた。 アッパー系演歌(「北酒場」とか「祭」とか)もガンガンに流れ賑わっていた。 「あたしは騒がしいの嫌いだよ~」と言いながら、母も歩行器を押しながらロビーに出てきて、職員さんに促されて射的ゲームを始めた。 ポン、ポン、とこれがなかなか上手に景品の人形などを倒していく。その度に職員さんたちが「すごいじゃなーい」「うまいねぇ」と囃し立てる。小さな子供にいうような口ぶりだ。ちょっと90歳の人間に対してその子供扱いはどうなのかなぁ、と息子は思ったのだが、母は自分の腕前に興奮したのか、ポン、ポン、とまた空気銃で景品を倒してみせた後、振り返り突然「うまいだろ賢二、あたしは射撃をやって

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第11回)ナマさんと鉄砲
    u-li
    u-li 2023/09/27
    あ〜オーケンの文章だ〜……って思った箇所 “「……一番がふたりって変じゃない?」”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第10回)天気がいいとかわるいとか

    たまに街で「あ、大槻さん」と声をかけられることがある。概ね皆さん好意的で「応援しています」などと言ってくださる。たまに、前にも書いたが「大槻さんは現代のソクラテスです」などと言い出す人もいて驚かされることもある。 逆に……と言うか、いつだったか「ファンです。読んでます」と男性に声をかけられたので「ありがとう。音楽の方もよろしくです。ニューアルバムも出て……」と返したところ、「いいえ、聴きません!」とキレ気味にかぶせられて戸惑ったこともあった。 「え」 「聴きません! 僕は現代音楽しか聴かないんです」 そう言って“ファン”の方は背を向けて去っていった。 人と人との距離感とは複雑なものだなぁ、と思った商店街の午後であった。 距離感ということでいえば春先に近所の公園でファンだという方に声をかけられた。そして「大槻さん、〇〇です」と名乗ってくださったのだが、ちょっとわからない。 「え? 〇〇さん

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第10回)天気がいいとかわるいとか
    u-li
    u-li 2023/09/13
    “生きているといろいろあるけれど、もしも、はるか昔にゼロ距離で出会った人と、今日、ほどよい距離ですれ違うような挨拶が出来て、彼女の瞳にこの世界を憎む色の微塵ももう見て取れなかったというならば”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第9回)リンゴチジョ最初の受難

    今夏はライブをやり原稿を書き時間が空くと映画を観に行った。通常営業である。 90歳になる母が施設に入ったので、何回か面会に行ったことぐらいが他のこの季節と異なるところであったろうか。母は病院にいた頃より歴然と表情が明るくなっていた。施設のアットホームな雰囲気が合ったらしく「家にいるのと全然変わらないよ」と言う。 そして息子が「次は横浜でライブなんだ」と言うと「賢二、うるさいからロックなんてやめな。演歌にしな。演歌なら1曲当たれば10年は喰えるよ」と、35年前にメジャーデビューを報告した時と全然変わらないことを言って、またアハハハハと笑うのであった。 映画は今夏なぜかホラー映画にはまった。 昔から嫌いではなかったけど、今年の酷暑に恐怖の刺激を欲したのか、沢山観た。先日も「当にあった呪いのビデオ」の劇場版を観るために池袋まで出かけてきた。映画館で聞く決め台詞「おわかりいただけただろうか?」は

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第9回)リンゴチジョ最初の受難
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    u-li 2023/08/30
    “映画館で聞く決め台詞「おわかりいただけただろうか?」は格別に不気味で恐ろしかった” ほんまか~~~!!!
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第8回)アミラーゼだな

    ライブの記憶があまりにもない問題、ということがあるかと思う。 たくさんライブをやっていると、基的にライブで何をやったか、何を言ったか、どんなことがあったか、そもそもそんなライブをやったのかどうかさえ、あんまり覚えちゃいないようになるのだ。 「今夜のライブ一生忘れないぜ!」 「みんなのその顔、ずっと目に焼き付けておくぜ!!」 とかロックの人々はライブで言ったりするが、ウソである。 次のライブをやる頃にはすべてを忘れ去っているし、下手すれば打ち上げでもはじまって 「ウーロン杯3つ」 とか言った頃にはもうまるで宇宙人に抜かれたかのようにスッポリ記憶がなくなっているものなのだ。 それは恐らく脳の防御システムによるものなのかもしれない。次々に忘れて行かないと、ライブという濃い体験で脳の容量を超越してパンクしまうからだ。 だからライブをやる者の多くはせめて、ひとつのライブについてひとつくらいの印象の

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第8回)アミラーゼだな
    u-li
    u-li 2023/08/16
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第7回)極楽鳥

    最高のロックンローラーであるPANTAさんが亡くなった。73歳。闘病中とは聞いていたが、急な訃報を七夕の日の昼に知った。 その日は夕方から川口の方面に車で出かける予定があった。車の中でずっとPANTAさんの歌を聴いた。どの曲も、最高だ。 PANTAさんの歌を知ったのは、中学生の頃だったか。多分「兵頭ゆきのセイヤング」かなんかから流れてきた頭脳警察の「ふざけるんじゃねぇよ」という曲を聴いて、僕は勉強部屋で深夜に一人衝撃に打ち震えてしまった。~ふざけるんじゃねぇよ、動物じゃねぇんだぜ~と、パンクロックの出現より早くパンクな言葉を叫ぶPANTAというボーカリストの迫力に圧倒され恐怖さえ覚えた。 深夜放送等の情報などによれば頭脳警察は学生運動の集会でもよく演奏し、反対セクトからステージに投げ入れられた火炎瓶を投げ返しながらライブを続けたという。 やっぱりコワい人なんだな! そう思ってレンタルレコー

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第7回)極楽鳥
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    u-li 2023/08/02
    “楽屋で緊張しながら僕が 「ルイーズが大好きです」 と言うとPANTAさんはニコ~ッと笑って 「今日その曲やるよ。じゃ大槻出てこいよ」 とこともなげに言った。 「え?」 「一緒に歌おうぜ」”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第6回)私はバンギャになりたい

    入院にしている母の90歳の誕生プレゼントに、白と黒のうわっぱりをあげたら「意外に地味な色だね」と言って笑った。でも気に入ったようで「退院したら家で着れるよ」とベッドの脇にちょこんと座ってうわっぱりをなでていた。 僕はロックを生業としているけれど、その日常が他の一般的なお仕事の方々とさして変わらない面が多いことにたまに茫然とする。母の年齢的に言って、退院後に自宅ではなく、介護施設的なところに入ってもらう可能性もあり、その事を告げる役どころは、兄はもう死んでいるから、次男の僕になるのだ。今まで何度も大規模会場で何千人の前で「もう一回、行ってみるかぁ!!」なんて平気で話しかけてきたけれど、病院の大部屋の隅でたった一人に「あ……お母さん、実は……」と声をかけることがこんなにもためらわれる。 ……挫・人間の下川リヲ君には青い革ジャンをプレゼントした。7月2日に僕のバンド・特撮と、下川君のバンド・挫・

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第6回)私はバンギャになりたい
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    u-li 2023/07/19
    “今でも『ああ、バンギャになりたいなぁ』と強く心に思う”“若くて、真剣で、前しか見てなくて、ちょっとそれ痛いんじゃないかなぁくらいのオシャレをしていて、今だけに夢中になっている”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第5回)一瞬の長い夢

    ロックミュージシャンの日常が案外つつましやかだなどということは、今時もう皆うっすら気付いていることと思う。たまにメディアでセレブを気取ってみせている方もいるけれどアレは頑張って意地をはっているのだ。お仕事でやっているだけなのだ。多分そうだ。そうなんじゃないのか? 違うのかな?? どうなの……不安になってきたが、筋肉少女帯メジャーデビュー35周年ライブの会場に出かける前、僕ははなまるうどんでぶっかけ温玉(小)をべた。かき揚げを添えて。 近くのテーブルに髪を赤く染めた量産型ファッションの若い女の子がいて、あらかたべ終えたうどんの杯を横に、机につっぷして横向いて大口を開けて寝ていた。鼻筋の通った綺麗な子だ。くー、かー、と小さな寝息さえ立てていた。一体どんな色の何の夢を見ているのだろう。「ムニャムニャ」と言った。 記念のライブはラインキューブシブヤで行われた。旧渋谷公会堂だ。1988年に22歳

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第5回)一瞬の長い夢
    u-li
    u-li 2023/07/06
    “ラインキューブシブヤで僕は歌った。「35年、夢のようだった」とMCでも言った”“体はボロボロになってるから、確かに時は経ったんだな~「もうみんなも体ボロボロだろ?」 とMCでメンバーにふると”
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第4回)おサル音頭

    海が見える横浜のハコで、発声OKのライブを約3年ぶりに行った。 筋肉少女帯も他のバンド同様に、コロナ禍においてはコール&レスポンスが約3年禁じられていたのだ。舞台上からのコールは出来るが、客席からのレスポンスが届かない。「イエーッ」と叫べどもウンともスンとも返ってこない。どころか、昭和の歌謡ショーでもあるかのように、ざ~、ざざ~と波の音のような拍手のみが打ち寄せてくるのだ。長い年月「イエー!」には「イエー!」で返していただいていた身にこれがどれほどのショックであったことか。 僕はコロナ禍突入一発目のライブで「イエー!」「ざ~、ざざ~」の“コール&さざなみ現象”にガク然となり、己の積み上げてきたライブスタイルを根底から否定されたかの気分に陥り、まさに波打ちぎわの孤独な散歩者といった感じとなってひどく落ち込んだ。ふがいなさに思わず「今夜のライブ、正直すまんかった」とライブ直後にメンバーに謝った

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第4回)おサル音頭
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    u-li 2023/06/21
    “なんで音頭なんか入れたのか、と問われるならば、若かったのだ。あの頃。僕はトガッていたのだ。俺らともかく奇をてらってリスナーの意表を突いてやりたかったのだ”