「英国のコメディ」=twisted sense of humourが当たり前という感覚でいると、非常にクラシカル(古めかしい)な感じの作品群だが、かつてロンドン西部のイーリングにあった「イーリング撮影所」という制作会社で制作された喜劇映画(私も全部通して見たことのある映画はない)についての本だ(なお、撮影所の施設は今もあるが、イーリング映画の製作会社は1955年にBBCに買収され、フェードアウトしている)。 一般に「イーリング・コメディ」というと第二次大戦後から1950年代終わりの作品を指すことが多いが、この本は第二次大戦中のプロパガンダ色の濃いコメディ(人情喜劇、というか)のところから書き始められていて、非常に興味深い。(対ナチ・プロパガンダの中にあっても「冷静に見て、我々にはこのような弱点があるので、みな気をつけよう」といった啓蒙のトーンは、大日本帝国のプロパガンダとも、米国のプロパガ