端的に言おう。オリヴィア・ロドリゴの本作によって、昨今のリバイバル・ブームはいよいよ次のフェーズへと向かうことになる。ピンクパンサレス、リナ・サワヤマ、NewJeans……90年代~00年代の音楽がマチズモの解体や軽やかさの獲得といった形でさまざまに再定義されてきたが、『GUTS』はそのような試みをもう一段前に進め、<過去の音楽>と<感情の描写>をより強固に結びつける。サウンドのデータベースと感情のカラーパレットを一つひとつ接続させ、多くの色彩とタッチで、移ろいやすい複雑なエモーションを描ききる。未だかつて、誰も成し得ていない形で。 予兆は前作にもあった。「good 4 u」(2021年)を思い出してみてほしい。イントロから思わせぶりに鳴るベース音、ひんやりとしたコーラス、「良かったねそんなに簡単に吹っ切れたなんて」と笑みを浮かべ静かに歌う不気味なヴォーカル──ホラー映画のように徐々に不安
1. わたしはサプライズ・ジャンキーだった。刺激と意外性に飢えていた。だから『1000 gecs』(2019年)の予測不能な曲展開や、ブロステップやエモ・ラップやフューチャー・ベースやメタルコアが区別なく、床に乱雑に散らかっているようなサウンドに興奮させられた。かつて、同様にベッドルームからはみ出した青紫色の享楽と衝動、レイト・オブ・ザ・ピアの音楽を初めて聴いたときにも日常の退屈をぶっとばしてくれる爽快感を感じたが、100 gecsの音楽にはもっと、だめな日常をさらに台無しにしてしまうような破滅感と凄みがあった。そんなわけで、疲れたら100 gecs、寂しくなったら100 gecs、眠たくなったら100 gecs。とにかくもう聴きまくり。意外性に“慣れ”たら今度はTwitterやらRate Your Musicで、galen tiptonとかfood houseとかToiret Statu
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