漫古☆知新-バカでも読める古典文学- 漫☆画太郎 <完結済み>伝説の奇才作家・漫☆画太郎がジャンプラ読者に古典文学を紹介!大胆な新解釈でジャンプラ読者を啓蒙する! [JC発売中]
「楠本まき『KISSxxxx 愛蔵版1 〈楠本まきコレクション〉』(小学館)」 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の影響 前篇では、楠本まき『KISSxxxx』を「日常系ゴス」だの「ハッピーゴス」だの滔々と語ってきたが、今回はそのあたりをもう少し深く考察してみたい。つまりマーガレット・コミックス(ワイド版)第3巻の「作品かいせつ」にある、以下の頭を悩ませる文面をしっかり考慮に入れるということだ。 「巻末の『蟹のカノン』は、D. R. ホフスタッターの『ゲーデル・エッシャー・バッハ』を読んで以来ずっとかきたかったもので、『KISSxxxx』はこれをかくためにかいていたようなものです。蟹・かめの・亜樹良という登場人物の名前もそこからとりました。また「カノン」という概念は、『KISSxxxx』全体のテーマでもあります。」 難解をもって鳴る『ゲーデル、エッシャー、バッハ——あるいは不思議の輪』(以下
「マンガとゴシック」第9回:楠本まき『KISSxxxx』論 前篇——キュアーで踊る、ハッピーゴスの誕生 「楠本まき『KISSxxxx 愛蔵版1 〈楠本まきコレクション〉』(小学館)」 ポジティヴ・パンク/ゴスロックを描いた初のマンガ 水野英子『ファイヤー!』が先鞭をつけ、上條淳士『TO-Y』が中興の祖となり、のちにハロルド作石『BECK』、矢沢あい『NANA』、浅野いにお『ソラニン』などヒット作の百花繚乱となる「バンド漫画」の系譜が日本にはある(島田一志『ロックコミック』に詳しい)。その中でも孤高と言ってよいカルト的な立ち位置にあるのが、楠本まき『KISSxxxx』ではなかろうか。 もしかするとマンガ史よりも、サブカルチャー史全体に与えた影響の方が甚大かもしれない。(おそらく嶽本野ばらの啓蒙も後押しして)世代を超えて読み継がれるゴスロリのバイブルとなっている、というのがまず一つ。また、愛蔵
口コミで広がる自費出版の漫画「ROCA」 自費出版で作られた一冊の漫画が、Twitterを中心に口コミで広がり、朝日新聞やTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で取り上げられるなど、大きな話題になっている。いしいひさいちの「ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ」だ。 「ROCA」の物語は、地方の海辺の街(「ののちゃん」の舞台と予想されている岡山・玉野だと思われる)に住む女子高生の吉川ロカが、ポルトガルの大衆歌謡/民謡ファドの歌手を目指す、というもの。いしいらしいスカッとした諧謔や軽快さとともに4コマ形式で綴られるのは、ストリートでのライブを経たロカが才能を開花させていく歌手活動、彼女の愛らしいキャラクター、親友・柴島美乃とのつかず離れずの友情、街の人々とのあたたかい交流だ。ラストの数篇でたたみかけられる展開があまりにも切なく胸に迫り、じんわりと染み入る作品になっている。 「ROCA」はも
おじさんが少女とつきあう漫画が増えている? 私は以前から「サラリーマンを描いた漫画」に興味があり、1960年代の作品から現在連載中の作品に至るまで、多くの漫画を読んできました。日本人男性のマジョリティであるサラリーマンを描く大衆文化には、それぞれの時代の代表的な労働観や人生観が投影されます。だからサラリーマンを描いた漫画を通して、日本人そのものを深く知ることができると思っています。 そんな中で最近、気づいたのです。サラリーマンが少女とつきあう漫画が増えているのでは? と。 きっかけは、おそらく『恋は雨上がりのように』(眉月じゅん/小学館/2014〜2018)のスマッシュヒットです。陸上選手としての夢をケガによって断たれた女子高生が、ファミレス店長である冴えない中年男性に恋をする話です。年の差が28歳もあるプラトニックな純愛を描いたこの作品は、2018年にアニメ化と実写映画化が行われ、全10
2019年、『マッチングアプリで会った人だろ!』で 「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。モーニング月例賞2020年5月期奨励賞受賞『普通の人でいいのに!』がTwitterを中心に話題となった。その後、「コミックDAYS」で連載された『まじめな会社員』は登場人物のリアルさやその自意識描写が話題となり人気に。 まじめな会社員(全4巻)各¥715/講談社 主人公の「菊池あみ子」は東京に住む30歳の契約社員。マッチングアプリでデートを重ねるも彼氏は5年できておらず、仕事も楽しいとは言い難い。周りからの目を気にしながらもコツコツとまじめに働くあみ子だが、心の底では「やりたいことをやりたい」「アナーキーに生きたい」とクリエイティブな職業や界隈に憧れている。しかし、いわゆる“ワナビー”などこか痛々しいあみ子の努力は空回りし、自分の理想に自分が追いつかない。憧れの世界に少し近づいては遠ざかり、“向
直筆の原稿やカラーイラストなど総数350点以上の資料をもとに、多角的な視点から冨樫の作家性の真髄に迫るこの展覧会。入場は全日日時指定制で、巡回展も大阪、福岡で実施される。 展覧会の発表に併せて冨樫の描き下ろしキービジュアルが公開され、直筆メッセージが到着。ビジュアルには中央に並ぶ浦飯幽助とゴン=フリークスをはじめ、「幽☆遊☆白書」「レベルE」「HUNTER×HUNTER」のキャラクター15人が集合している。冨樫は「この度 冨樫義博展 -PUZZLE- を開催する事となりました。これもひとえに御愛読してくださった皆様の温かい愛情の賜と厚く厚く御礼申し上げます」と感謝を述べたのち、「固いな」と一言を挟んで「私自身思っておりますよ。『いや話の続き描けよ。』って思われてんだろうなと。確かに2年ほど椅子に座れない状態で描けませんでしたが、従来のやり方をあきらめることで現在は何とか執筆を再開しておりま
3月4日発売のコミックス上巻が即大重版!発売2週間にして早くも35万部突破、そして連載もいよいよクライマックスの『タコピーの原罪』。最新話が更新するたびにTwitterのトレンド1位連発の衝撃的な初連載を飾ったタイザン5先生に執筆の裏側、そして「ジャンプルーキー!」などについて、担当編集者であるジャンプ+編集部・F田同席のもと語って頂いた! ***** ◆「思いつき」から打ち合わせで決める ――過去に発表された読切『ヒーローコンプレックス』『キスしたい男』は異なる方向性の作品ですが、どのように考えられましたか? タイザン5:読切はその時の思いつきから作ったので、決まった方向性がなかったのだと思います。『ヒーローコンプレックス』は「漫画家の友達が主人公をネタにしてきて、それが嫌だ」という話を思いつき、展開を派手にしようとふたりに収入格差をつけたり、分かりやすいように兄弟にして、F田さんと打ち
名シーンの多いドラゴンボールですが、印象深いエピソードと聞いて、孫悟飯とピッコロの特訓を思い出す人は多いのではないでしょうか。悟空と敵対関係にありながらその息子である悟飯を鍛え上げるピッコロ、そして修業を通じて二人の関係が変化していく一連の流れは、作中でも非常に人気のあるエピソードのひとつです。 とはいえ、地球に襲い来るベジータ・ナッパを迎え撃つため、ピッコロに鍛えられていた頃の悟飯はわずか4歳。獣がはびこる土地で6か月間放置され、その後はピッコロとの闘いの日々……いくら悟飯に才能があったとしても、修業の辛さは生半可なものではなかったはず。悟飯はどのようにして修業を乗り越え、さらにピッコロと信頼関係を育んでいったのか、作中に描かれていない過程についてもついつい考察してしまいます。 そこで今回は、東京大学の教授で、発達心理学の専門家である遠藤利彦先生に「ピッコロと悟飯の師弟関係」についてお話
ときに生きづらさの原因にもなる「自意識」とどう向き合うべきか。読み切り作品『普通の人でいいのに!』などで“自意識強め”の主人公を描くマンガ家・冬野梅子さんにインタビューしました。 恋愛、結婚、出産、キャリア形成などさまざまなトピックで、ついつい周囲の視線を気にしてしまいがちな30代。自意識を“こじらせて”しまい、周りの人を意識した言動を取ってしまう……そんな自意識過剰ぎみな自分が嫌になって……と負のループに陥ってしまっている方も少なくないのではないでしょうか。 そういった方々を中心に、性別を問わず“刺さる”と注目と共感を集めているのが冬野さんの作品。 配信サイトで過去最高PVを記録した『普通の人でいいのに!』や、単行本化も決まった最新作『まじめな会社員』などの執筆エピソードを交えつつ、冬野さんが「自意識をどう捉えているか」を伺います。 「いじけている人」に寄り添うようなマンガを描きたい 2
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています 試し読みサイト「ちゃおコミ」で公開された読み切りホラー漫画『笑顔の世界』が、ネット上で「すごい切れ味」「SFホラーすぎる作品」と話題です。徐々に明らかになっていくディストピアの世界観が怖い……! (画像はちゃおコミより引用) 物語の主人公は飢田リカコ。母親とペットのチー太と暮らす小学5年生です。正義感の強い彼女は、いじめが常態化している学校に嫌気がさしています。 (画像はちゃおコミより引用) 担任の教師にクラスメイトがいじめられていると訴えても、「だっていじめは必要悪だろ?」と開き直られてしまいます。なぜなら、立場の弱い人に発行される「被虐証明書」があれば、どれだけ虐げられても脳が幸福物質を出すようになる手術を受けられ、いじめられる側も笑っていられるのだというのです。 (画像はちゃおコミより引用) 恐怖のあまり学校から逃げ出したリカ
つれづれに思いつくまま 萩尾望都先生の『一度きりの大泉の話』が出版されてから心がざわついて落ち着きません。 どうしてこんなことになってしまったのだろう?と、凄く残念な気持ちです。 何がいけなかったのか? 誰が悪いのか? いくら考えても答えが出ないのです。 人生に「誤解」はつきもの。そう理解していても口惜しい… 5年前に『少年の名はジルベール』を出版して以来、萩尾先生のところにドラマ化や対談のオファーが相次ぎ、ご迷惑をおかけしていたらしいことを『一度きりの大泉の話』を読んで 知り、驚きました。本当に残念に思います。ですが…誤解が多々あるようなのです。 それが原因で心が落ち着かないのかも?と思い、マネージャーとして知っていることだけを忠実に、せめてblogにでも書き綴ってみようと思い立ちました。 ドラマ化については『少年の名はジルベール』の出版以来、二度ほどオファーが来て、私達も断るのに苦労し
COMIC Interview 芳文社創立70周年を迎えて。「まんがタイムきらら」編集長が考える“これからの日常系”の形 2020.08.28 2020年、芳文社が創立70周年を迎えた。日本初の週刊マンガ誌「週刊漫画TIMES」、日本初の4コマ専門誌「まんがタイム」など、他社に先がけて新しいジャンルの雑誌を生み出し、マンガ業界の中で存在感を示してきた同社。特に2002年に創刊された「まんがタイムきらら」は、日本国内のみならず海外にもファンが多い「日常系」作品群の源流にもなっている。 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、かつての「当たり前の日常」はもはや過去のものになろうとしている。70周年の節目を迎え、芳文社はこれからの時代にどのように対応していくのか。「新しい生活様式」という言葉も使われるようになった今、日常の尊さを読者に伝えてきたきららが果たすべき役割とは何か。まんがタイムきらら系列
「自分は仕事を通して成長できているのだろうか」「自分は会社から必要とされているのか」というモヤモヤを抱えながら働くビジネスマンも少なくないだろう。そんなあなたのすぐそばに、「仕事はできないけれどなぜか社内で自信満々に振る舞う同僚」がいたとしたら……? 今回取り上げる漫画『無能の鷹』(作・はんざき朝未)には、まさに「仕事はできないけれどなぜか社内で自信満々に振る舞う同僚」が登場する。本作の主人公、鷹野(たかの)ツメ子は全く仕事ができず、できるようになろうともしないが、落ち着いた口調と余裕たっぷりの態度で「仕事がデキる」オーラを常時醸し出す。一方、鷹野と同期の鶸田(ひわだ)は、仕事は卒なくこなすタイプだが、プレッシャーに弱く、自分に自信がない。『無能の鷹』はそんな二人がタッグを組み、お互いの欠点を補い合いながら、さまざまな仕事に挑戦していく物語だ。 作中、鷹野は鶸田に「会社に必要とされてるかは
しかし、世間では「妖怪は民俗学が扱うものだ」と考えるのがどうも一般的な捉え方のようです。翻って、「民俗学は妖怪を研究する学問だ」と考えている人までいるようです。 これは、明らかな誤解というよりありません。 (京極夏彦『文庫版 妖怪の理 妖怪の檻』角川文庫、角川書店、2011年、32頁) 「独断と偏見で選ぶ〝民俗学っぽいマンガ〟」を選ぶために このように思ったことはないだろうか。 「ホラーとかオカルト系のマンガって、たいてい民俗学者っぽいキャラが出てくるよね」 わかる。 でもじゃあ、実際、民俗学者が出てくるマンガってどんなものがあって、それってどれくらいあるのだろうか? そもそも、ホラーとかオカルトとか伝奇とか妖怪とかのマンガには、どうしてよく民俗学者が出てくるのだろうか? しかし、その問いに答えることは、実は容易ではない。 なぜか。 たとえば、考古学には、櫻井準也『考古学とポピュラー・カル
13年前の“まことちゃんハウス”騒動 楳図氏といえば、その作品が漫画界に止まらない幅広いクリエーターに影響を与えるなど、業界の“レジェンド”とされる一人。赤白のボーダー柄のTシャツがトレードマークの楳図氏のユニークなキャラクターは、テレビのバラエティ番組でも人気だった。 そんな楳図氏がニュースやワイドショーで大きな注目を浴びたのが、この自宅の建築を巡る騒動だった。建築当時に取材したスポーツ紙デスクが振り返る。 「吉祥寺の自宅、通称 “まことちゃんハウス”が話題になったのは13年前の2007年7月のこと。当時建築中だった赤と白のボーダー柄を外壁に施した自宅に対して、近隣住人から『周囲の景観を無視した奇っ怪な建物』『色彩の暴力』などとして、建築工事差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てたのです。この騒動は連日大きく報じられて、いつしか観光地化し、まことちゃんハウス前で記念撮影する人が絶えな
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