「念願の初優勝ではあったんですけど、レースで優勝して、うれしくなかったのは今回が初めてです」 日本選手権の男子5000mを制した遠藤日向(住友電工)は、こんな印象的な言葉でレースを振り返った。 ようやくつかんだ日本一のタイトルだったが、遠藤にとってそれはあまりにも苦い勝利の味だった。 五輪を目指し大学ではなく実業団へ 多くのライバルが箱根駅伝を目指して関東の大学に進学するなか、遠藤が実業団に進む道を選んだのは、早い時期から東京オリンピックを目標に掲げていたからだった。 「東京五輪が開催される2020年は、大学に行っていれば4年生ですが、自分には箱根駅伝とオリンピックと両方を目指すのは厳しい。駅伝に興味がないわけではありませんが、オリンピックと箱根だったら、絶対にオリンピックに行きたい」 高校卒業時、遠藤はこんなことを話していた。進路を選ぶ過程には並々ならぬ覚悟があったに違いない。 そして、