■祀られた仏たち 大矢邦宣 みちのくは、魅力的な平安仏の一大宝庫として、仏像ファンにつとに有名である。先ず都の仏像にもひけを取らない名品の一群がある。重厚にして躍動感のあるオーフを発する福島喜多方・勝常寺の薬師如来坐像、厳めしい信頼感に溢れ、我が国最古の墨書年号を持つ岩手奥六郡の盟主・黒石寺薬師如来坐像、重量感たっぷりの美男仏、宮城栗原・杉薬師双埜寸の薬師如来坐像、わずか十四センチほどの鏡面ながら仏の宏大無辺の世界を表現する傑作・秋田大仙市の水神社の線刻千手観音立像鏡像、さらには明快な鎌倉仏を先取りする山形・山寺立石寺秘仏本尊薬師如来坐像、荘厳と一体となって光溢れる極楽浄土を現出した岩手・中尊寺金色堂の諸仏等々、枚挙に暇がない。 だが、都風の仏像ばかりが心を惹きつけるのではない。仏像ファンを魅了してやまないのは、いわゆる「みちのくらしさ」溢れる仏像である。それほ早くも平安前期、福島大蔵寺の