人工知能(AI)大手のプリファード・ネットワークス(東京都千代田区、西川徹社長)とENEOSが開発した原子レベルシミュレーター「マトランティス」が材料開発に衝撃を与えている。原子スケールで材料の挙動を再現して大規模な材料探索を高速で行える。量子論に基づいた膨大な計算が必要だった材料解析をAIで代替する道が見えてきた。 「多くの問題で量子化学計算を使った場合にほぼ匹敵するような精度を達成できることを確認した」。両社の共同出資会社であるプリファード・コンピュテーショナル・ケミストリー(PFCC、同千代田区)の岡野原大輔社長は話す。 高速計算の秘密は量子化学計算の“結果”を瞬時に得られるAIモデルにある。AIは分子内の原子の位置関係とポテンシャルエネルギーの関係の膨大な組み合わせを数年かけて学習しており、これを使い未知の物質のエネルギーを計算せず瞬時に導く。同エネルギーを使い分子動力学計算を行う