2022年3月、差し戻し審判決の福岡高裁に入る大鋸武浩さん(左から2人目)ほか漁民原告団。(撮影/永尾俊彦) 「われわれは何も悪いことはしていないのに、なぜ(『開門』を強制する)権利を取り上げられなくちゃいけないんですか!」 3月7日、東京の参議院議員会館で開かれた国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の「開門」を求める院内集会で、佐賀県太良町の漁師・大鋸武浩さん(53歳)はこう叫んだ。 諫早湾干拓潮受け堤防の「開門」を命じた福岡高裁の確定判決(2010年)の原告の一人が大鋸さんだ。その原告らに対し、国が判決の強制力をなくすよう求めた裁判(請求異議訴訟)の差し戻し審で昨年3月、同じ福岡高裁が「漁獲量は回復傾向にある」などとして確定判決後の事情の変動を認め「強制執行は権利乱用」として国の請求を容認した(本誌昨年4月29日・5月6日合併号既報)ため、漁民側が上告していた。だが、最高裁は